余所者-よそもの-
「知らん。元が誰のモンやなんか関係あらん。あそこに並んどぉ時点でモノは露天街のモンや」
「でも、」
「露天街は何でも売る。仕入れがなんであれ、規律の上で品を出す。売る側がいくらの値を付けようが自由、誰が何を売ろうが自由。商売ナメるなよ小娘」
そう言って最後、付け加えるように「俺ぁ阿呆の味方はせん」と吐き捨てた。
ユキの言っていた通りだった。
取り付く島もない。
露天街の規律を破った私たちが悪い。
例外なんて認めないようだった。
どんな事情があれ、感情があれ関係ない。
規律、ルールが全てだと言う。
「………」
八賀は片膝を立てた。
いよいよ腰を上げようとすると同時、ユキが口を開く。
「まぁ、仕方ないよね。それが露天街のルールだ」
「わぁったらさっさと帰れ」
「いいや?八賀さん、話はまだあるんだ」
「………」
垂れた瞼(マブタ)の先の八賀の目は黒く深く見えた。
じと、と睨み上げてくる八賀の威勢に身震いがした。
一方のユキはおだてるように「まぁまぁ」と薄く笑っている。
「そう睨まないで。今度は八賀さんの大好きな商売の話だ」
「商売やと?」
訝しげになる八賀に、ユキは一枚の紙切れを八賀に差し出した。
「……なんじゃ、これは」
――その紙はついさっき。
私がユキに渡したもの。
『八賀に時計を売った時、金以外に何か受け取らなかったか?』
『何も……領収書?くらいですかね』
『見せて』
人のものを売って得たお金だ。
念のためにと、売買の証拠は財布の中に入れて取っておいた。
けれど、この紙がなんだっていうんだろう。
八賀は首から下げた老眼鏡を手にとり、内容を読み込んでいた。