余所者-よそもの-


「それは八賀さんが発行した”質札”。少し前に俺の時計、質に入れたんだよね」

「覚えないぞ。おまんが俺の処なんぞ……」

「うん。質入れしたのは俺じゃない。コイツだから」


そう言ってユキに両肩を掴まれ、前に差し出された私。

八賀は老眼鏡を外して、まじまじと私のことを見る。


「……知らん」

「え。私ここに来ましたよ。覚えてませんか?」

「知らん。俺ぁ一度商売したヤツの顔は忘れん」

「顔……あ」


そうだ、思い出した。

……私あのとき、スッピンだったんだ。


「あの、あの時お化粧してなかったのでもしかしたら別人みたいに思われてるかもしれませんが。この街に来てすぐにここを訪ねさせてもらいました。余所者です」

顔を指しながら「覚えていませんか?」と言うと、八賀はようやくピンと来たようだった。


「お前……あん時の」

「はい」

「まだ居ったんか」

そう零したところで、再び紙に目を落とす。


「ほな、この質札は……」

「ねぇ八賀さん。”預けた”時計を、返してほしい」

「………」

「今、すぐに」


ユキの語気が強くなった気がした。

反対に、手元の紙に目を落とす八賀の様子がおかしい。
先ほどまでの威勢が綺麗さっぱり消えている。

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