余所者-よそもの-
「急すぎるわ。出直せ」
「なんで。たかが十万の質入れだろ?……ああ、そうだ。八賀さんさっき言ってたね。『売る側がいくらの値を付けようが自由』なんだっけ?いくらでも良いよ。二倍でも、三倍でも、なんなら一億でもいい。アンタの好きな値を付ければいい。今すぐ買い戻してやるよ」
質入れってなんだ。
買い戻すってどういうことだ。
売ったのと質入れって何が違うの。
わからないことだらけ。
しかもユキは八賀に一億でも払うとまで言ってる。
十万で仕入れたものを一億で買い戻すとなると、八賀はとんでもない大儲けをすることになる。
なのにどうしてだろう。
八賀は都合が悪そうに、はぐらかす。
ユキは畳みかけるように口を開いた。
「なぁ。どうせ現物なんてもうとっくにないんだろ?ないものは出せないもんな?」
「………」
「十万で仕入れたあの時計をいくらで横流しした?買ってそのままの保証書付きだ、三桁にはなったろ」
「おまん……ハメたな?」
「先にハメたのはそっちだろ。アンタはコイツが何も知らないことをいいことに、質流れの期限も待たずに勝手に売り払って、喰いモノにしたんだ」
胡坐をかいて座る八賀の前に、ユキがゆっくりと歩み寄る。
すっと影が落ちるように見下された八賀は、何か腹を括ったようにユキを睨み返した。
「『商売ナメるな』っていう割に、露天街のトップはずいぶんとデタラメな商売やってんだな?」
しばらくの間、沈黙が場を支配した。
やがて八賀は静かに立ち上がると、何も言わずにこちらへ背を向ける。
「フン、胸糞の悪い。知らんウチに撒餌(マキエ)喰わされとったっちゅう訳か」
「今回のこと、片付けてもらっても釣が出るね?」
今回のことの片付けって。
つまり――…
「阿呆が。等価じゃボケ」
そう言い残し、八賀は静かに奥へと消えていったのだった。