余所者-よそもの-
33話:背徳の契約
――その日、一日の始まりこそ。
何らいつもと変わらない、平凡な朝だった。
なんとなく、いつもより早く目が覚めて。
特にやることもなかったから、一人早くに仕事について、静かなAnBarのフロアを掃除した。
サンコンとバンが揃って出勤してくれば、「おはようございます」と挨拶を交わす。
バンには「ブスには仕事しかやることねぇのな」なんて憎まれ口を叩かれたけれど、そんな軽口にすら、私はすっかり慣れてしまっていた。
買い出しを頼まれれば、快く引き受ける。
週に一度の「ジャンプも買って来いよ」のパシリだって、もう何の抵抗もなくなっていた。
本当に、いつも通りだった。
少し早めの時間に、いつもの行動を、いつもの流れで、いつものようにこなしていく。
これから先もこんな日々が続けばいいな。
こんな臆病な願望は。
たった一つの噂話から、音を立てて崩れていくことになる。