余所者-よそもの-
コンビニの雑誌コーナーに入った時だった。
向かいの棚で立ち話をする女子高生の会話がふと耳に入った。
「あ、ねぇねぇ知ってる?あそこ。この間さぁ」
「あれヤバいよね」
「すごい人集まってたもんね」
「時間が時間だったしね」
「アタシ初めて見ちゃった」
「マジ?見たんだ?」
「見た見た」
「死体とか、マジで無理」
…………。
死体。
死体?
このすぐ近くで人が死んだの?
もしかして、先週の人だかりのことかな。
たしか煙草屋の前だった。
Z地区に入る道の、手前の十字路。
私は何も買わずにコンビニを出て、走った。
頭に過った、可能性。
あり得ないと思う。
あり得ないとは思うけど。
どうか、小さな小さな可能性が。
どうか、大きな大きな思い違いだったと。
そう、証明したくて。
「あ、あの……」
目の前に煙草屋さん。
小窓からおじいさんに声をかけた。
「いらっしゃい」
「いえ、あの」
「うん?どうしたの?」
「ごめんなさい。煙草を買いに来たんじゃ、ないんです」
「なんだい」
「聞きたいことがあって」
「一週間前のことかい?」
おじいさんはそう言って、白くて長い髭を揉むように触る。
「もう君で何人目かな。何度か同じ話をしたから」
「その……ここで、」
「ああ。でも、その日店は閉じていたから。私は見てもないし、皆と同じさ。人伝(ヒトヅテ)に聞いたことしか知らないよ」
「どんな、」
「うん?」
「どんな人だったかって、知ってますか?」
白くて長い髭に埋もれた口が、歪んで見えた。
「どんなって言われてもねぇ。”金髪の男”だったってことくらいしか」