余所者-よそもの-


コンビニの雑誌コーナーに入った時だった。
向かいの棚で立ち話をする女子高生の会話がふと耳に入った。


「あ、ねぇねぇ知ってる?あそこ。この間さぁ」
「あれヤバいよね」
「すごい人集まってたもんね」
「時間が時間だったしね」
「アタシ初めて見ちゃった」
「マジ?見たんだ?」
「見た見た」

「死体とか、マジで無理」


…………。

死体。
死体?
このすぐ近くで人が死んだの?

もしかして、先週の人だかりのことかな。

たしか煙草屋の前だった。
Z地区に入る道の、手前の十字路。


私は何も買わずにコンビニを出て、走った。

頭に過った、可能性。

あり得ないと思う。
あり得ないとは思うけど。

どうか、小さな小さな可能性が。
どうか、大きな大きな思い違いだったと。

そう、証明したくて。


「あ、あの……」

目の前に煙草屋さん。
小窓からおじいさんに声をかけた。


「いらっしゃい」

「いえ、あの」

「うん?どうしたの?」

「ごめんなさい。煙草を買いに来たんじゃ、ないんです」

「なんだい」

「聞きたいことがあって」

「一週間前のことかい?」


おじいさんはそう言って、白くて長い髭を揉むように触る。


「もう君で何人目かな。何度か同じ話をしたから」

「その……ここで、」

「ああ。でも、その日店は閉じていたから。私は見てもないし、皆と同じさ。人伝(ヒトヅテ)に聞いたことしか知らないよ」

「どんな、」

「うん?」

「どんな人だったかって、知ってますか?」


白くて長い髭に埋もれた口が、歪んで見えた。



「どんなって言われてもねぇ。”金髪の男”だったってことくらいしか」





< 262 / 276 >

この作品をシェア

pagetop