余所者-よそもの-
私は走った。
何かを自分から振り払うように、全力で走った。
着いたのは、まだ西日は残るのに薄暗いそこ。
昼なのに夜をまとったように陰気臭くて湿っぽいそこは、決して足を踏み入れちゃいけないと教わった場所。
それでも何のためらいもなく、境界線を超えた。
「あの」
「ふぁ~い」
腕組みをしながら電信柱に寄りかかり、ぽつりと一人佇んでいた男。
大きな欠伸をしながら、薄い目でこちらを一瞥して首を傾げる。
「ハジメマシテ?いや、どこかで会ったことがあるかなぁ」
「少し、お話いいですか」
「どぞぉ」
いつかZ地区に迷い込んだ時に、一番最初に出会った長身の男。
選んだ訳じゃない。
ただZ地区に入ってからすれ違った三人目。
会話ができそうなのがこの人だった。
「人を探しています」
「どんなぁ?」
「……金髪の、細身で、それから……」
「んあ、知ってるよぉ」
詳しい特徴を言うより前に返されたそれに、うさん臭さを感じて男の顔を見た。
そんな私を察したように、男は鼻で笑ってみせた。
「いやぁ、だって彼有名人だったからぁ。金髪のヨソモノちゃん」
「有名人?」
「そだよぉ。手癖の悪いプッシャーに目ぇつけられてねぇ?」
「プッシャー?」
「うん。売人ねぇ。何も知らないことをいいことに喰いものにされちゃって。あれはさすがに可哀そうだったなぁ」
「……え?」
「助けてあげようにも紫藤さんトコにも目ぇつけられてたしぃ。厄介そうでみぃんな知らんぷり。最後は身ぐるみ剥がれて何もなくなっちゃってねぇ」
「………」
「最後はゾウモツまでいかれちゃうんだろうってウワサしてたからさぁ」
「……その、ひと、は……?」
「そうなる前に死ねてよかったよねぇ」