余所者-よそもの-
「……はなっして、」
「………」
「シド、放して!」
もつれる足。
シドの腹に抱えられたまま、引きずられるようにしてシトウを目指していた。
シドは何かを話すことも、手を放すことも、かといって優しく抱き上げることもしない。
ただ言うことを聞かない私の身体も、意志も、全て無視されてることに無性に腹が立ってきた。
「……放してってば!!」
ドン、とシドを突き飛ばすと、私とシドの間に人一人分の距離が出来た。
じっと交わった彼の視線に、なんでか泣きたくなった。
「……知ってたの?」
「………」
「ねぇ、シドは知ってた?」
「何をだ」
「彼のこと」
シドは視線を反らした。
ポケットから煙草を出して口に咥えると、今度はライターを探し始める。
「知ってたんでしょッ!?」
私はライターを探すシドの腕を力任せに抑えつけた。
聞いてほしい、教えてほしい。
目を反らさず、答えてよ。
「彼がドラッグに手を出してたこともっ」
「………」
「彼がZ地区で苦しんでたことも…っ」
「………」
「彼が……」
「……退け」
「――…死んだことも……ッ!!」
「……退けっつってんだろうがッ!!!」
勢いよく振り払われた腕に、私は冷たい地面へと転がった。
――キン。
澄んだ音を立ててジッポライターが開く。
「ギャアギャア喚いてんじゃねぇぞ」
煙を吐き出す吐息混じりの声と共に、キン、と蓋が閉じられた。