余所者-よそもの-
「じゃあ、とぼけるな」
「なにを」
「お前わかってたろ。どうして俺があの男をZ地区に帰したか。どうして日に日に痩せコケて、ゾンビみてぇなツラしてんのか。誰がどう見ても異常な身体で毎日、お前のとこにせっせと同情買いに行ってたもんな?」
「………」
「末期のアイツが、お前になんて言ったか覚えてるか?」
「やめて……」
「『このままじゃ死んじまう』『助けてくれ』」
お願い、やめて。
開かないで。
――『カナッカナッ!俺を見てくれ、このままじゃ死んじまう!』
――『カナ。お願いだ。助けてくれよ……』
どこで拾ったかわからない汚れたシャツを着て、紫の痣だらけの腕を私に伸ばしていた。
足を止めないように、目を合わさないように。
耳を塞いで、口を結んで。
一生懸命に無関心を装う私に向かって、彼は何度も何度も、必死に助けを求めていたのに。
「……さい」
シドが手を放せば、私の頭はコツン、と真っ黒で冷たいコンクリートに堕ちた。
「お前は逃げた。自分の手に負えねぇって、見て見ぬふりをした。それだけのことだろ」
「ごめん……な、さ……」
「お前がこの結果を選んだ。今更、喚くな」
私、わかってた。
今にも死んでしまうんじゃないかって。
だからこそ、毎日顔を見せに来るボロボロの彼を見るたびに、どこかで安心していたんだ。
今日は生きてた。
今日も生きてた。
ただ、それだけを確認して。
私は彼を見放した。
自分で選んだことの結果が、今、ここに訪れただけ。
「ごめんなさい」
最後まで知らんぷりして、誰かのせいにして。
どこまで私は、醜い人間だろう。