余所者-よそもの-
気がつけば、天井があった。
知らない天井。
知らない部屋。
知らないベッド。
――キン。
静寂を割る、あの音。
私はシーツの感触を確かめるように指先を動かした。
「ここは?」
「俺の店」
「そう」
横向きになってベッドに横たわる私の傍ら、シドが静かに煙草を吸っている。
「聞き耳ありゃ聞いてろ」
少し身体を捩ってシドの方を向けば、シドは私の視線を確かめてから、独り言のように話しだす。
「シトウでお前とモメてたヤツをぶん殴ったときから、もうやってた。どんな経緯があってZ地区に潜ったかは知らねぇ。ただ俺の範囲で暴れるZのクズを見つけたからそこへ帰した」
「………」
「シトウはZ地区の中に見張りは置けねぇ。見張りはあくまで境界線までだ。だからヤツが中でどう生きたかは知らねぇが、」
吐き出された煙が薄暗い空間に広がり、上へ上へと昇って消えていく。
私は行き場のない手に力を込め、シーツをぎゅっと握りしめた。
私の手元から、不格好な皺が広がる。
「死因は急性中毒。脳の血管が破れちまったんだとよ。サツから直接聞いた話だ」
彼の死。
その決定的な現実を告げられると、私が作ったシーツの皺はシドの座る位置まで真っ直ぐに辿り着いていた。