余所者-よそもの-
シドは吸い終わった煙草を灰皿にもみ消すと、その皺の行く先をなぞるように大きな手を伸ばす。
ゆっくりと彼の手が、私の手の上に重なった。
冷え切った私の手を包み込むように、シドの手が上から重ねてシーツを強く握る。
そのせいで、ベッドの上の皺はもっと、もっと深く広がっていく。
「なあ。不平等だと思わねぇか?」
シドの熱い吐息が、頬に振りかかる。
「テメェで勝手にトチ狂ったくせして、これじゃまるで貧乏くじじゃねぇか」
反対の手が、私の背中に触れた。
背中からゆっくりと腕を伝って、もう一方の手もぴったりと重なる。
シーツの皺は、私を中心にして広がった。
蜘蛛の巣に捕らわれた虫みたい。
それは、もがくほどに、深く絡まっていく。
耳元で悪魔のような声が囁いた。
「だから言ったろ。全部捨てろと」
忘れたかった。
出会ったことから全部、なかったことにしてしまいたかった。
全部全部、嘘ならよかった。
「できなかった」
「全部まるごと捨てちまえ。つまらねぇ道徳ごと、全部」
「どうやって?」
かすれた声で尋ねれば、シドは私にキスをした。
ピクリと反応をして、逃げるようにシーツに顔を埋めれば、行き場のなくなった唇が今度はうなじを食む。
うつ伏せになる私の背後から迫る熱に、シーツを握る手がじわりと緩んだ。
ずっと握りしめていたものが、私からするりと抜け落ちていく。
空っぽになった両手をシドが握りしめた。
すると彼は私の身体をいとも簡単にひっくり返し、熱の籠った瞳で私の頭の中に入ってくる。
「手っ取り早ぇ方法、教えてやろうか」