恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
不穏な影
 亜佑美が陽向と会ってから数日が過ぎたある日のこと、仕事を終えて会社を出た亜佑美は最寄り駅へ向かって歩きながら誰かに見られているような感覚を覚えたけれど、最初は気のせいだと思った。

 街中には大勢の人がいるのだから、たまたま視線が合っただけかもしれない――そう自分に言い聞かせるも、その違和感は電車に乗っても消えなかった。

 それは電車を降りた駅でも改札を抜けても、まとわりつくような視線は途切れない。

 胸の奥がざわつき、それは次第に恐怖へと変わっていく。

(……気のせいじゃ、ない?)

 このまま一人で家へ帰るのは危険な気がした亜佑美はすぐ側にコンビニへ入ると、震える手でスマートフォンを取り出して真っ先に朝陽へ電話をかける。

 事情を聞いた朝陽は電車で帰宅途中だったにもかかわらず、「その場を動かないでください」とだけ告げると、すぐに次の駅で降りてタクシーを拾って駆けつけることに。

 数十分後、駅前に止まったタクシーから降りてきた朝陽の姿を見つけた瞬間、亜佑美はコンビニから出て行き、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか涙目になる。

「朝陽くん……!」

 名前を呼びながら駆け寄ってきた亜佑美を朝陽は安心させるように肩を抱いた。

「もう大丈夫です。ひとまず今日は家には帰らず、俺の家へ行きましょう」
「うん……」

 その落ち着いた声に導かれるまま、亜佑美は朝陽と共にタクシーへ乗り込み、二人は朝陽のマンションへ向かった。
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