恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「悪い、別に怖がらせるつもりで言ったんじゃなかったんだけど……」

 不安そうな表情を浮かべる亜佑美を見た陽向は申し訳なさそうに頭を掻く。

「あ、ううん。私の方こそごめん。不安はあるけど陽向くんの言うことも一理あると思うし。それに、一緒にいてくれるから心強いよ。ありがとう」

 そう礼を言われると陽向はどこか照れくさそうに視線を逸らす。

「……とりあえず帰ろう。兄ちゃんにはタクシーで帰れって言われてるし、タクシー拾うか」
「うん、そうだね」

 二人はタクシー乗り場へ向かうと、一台のタクシーを拾って乗り込んだ。

 車内で暫く沈黙が続いたあと、陽向が思い出したように口を開く。

「つーかさ、あの男、取り引き先の人間なんだろ? 会社には相談できねぇの?」
「直接何かされたわけじゃないから……」
「……まあそっか。話しかけて来た程度じゃ無理か。やっぱ証拠がねぇと難しいか」

 重苦しい空気のまま話を続けているうちに、タクシーは朝陽のマンションへ到着した。

 料金を支払ってエントランスへ入り、周囲を警戒しながらエレベーターで部屋へ向かう。

 無事に室内へ入ると亜佑美はようやく張り詰めていた気持ちを緩め、小さく安堵の息を吐いた。

 その直後、スマートフォンが震える。

 ちょうど朝陽へ無事に着いたことを連絡しようと思っていた亜佑美が届いたメッセージを開くと、

《すみません、帰るの少し遅くなりそうです》

 予想していなかった言葉が記されていた。
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