恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 どことなく朝陽に似ている陽向が上半身裸のままで立っている。

 そんな姿を間近で見た瞬間、亜佑美の頬はみるみる赤く染まり、

「あ、ありが……とう……」

 礼を言う声もどこか上ずっている。

「ん? 何か顔赤くね?」

 不思議そうに首を傾げる陽向に亜佑美は視線を泳がせながら小さく答えた。

「だ、だって……その、その格好で近づかれたから……」

 上半身裸のまま距離を詰められたことが恥ずかしかったのだと打ち明けると陽向は、「ああ」と納得したように頭を掻いた。

「悪ぃ。着替えようとしてたらインターホン鳴ってたから気になってそのまま出ちまった」

 陽向は全く気にしていない様子で亜佑美から離れると、脱衣所へ戻ってTシャツを手にすると、それをさっと頭から被る。

「つーか亜佑美サンって意外と初心なんだな。このくらいで顔赤くするとか」

 小馬鹿にされた気がした亜佑美がムッと頬を膨らませると、陽向は苦笑を漏らした。

「風呂上がりなんだし別に全裸じゃねぇんだから気にすんなって」
「……そうだけど……朝陽くんは、そういうところきちんと配慮してくれるもん……」

 思わず口をついて出た言葉に陽向はどこか感心したように笑う。

「兄ちゃんらしいな」

 そう言ったかと思えば今度は腹を押さえて大きく伸びをした。

「つーか腹減った! 飯できた?」
「あっ、そうだった! まだ途中なの。急いで作るね」

 その一言で亜佑美は料理の途中だったことを思い出し、慌ててキッチンへ戻って行く。

 つい先程まで亜佑美の胸を締めつけていた恐怖は陽向の態度ですっかり薄れたようで、それを見た陽向は安堵の息を吐いたのだった。
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