恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「朝陽くん、お待たせ」

 亜佑美がそう声をかけると、その隣にいた界人が一歩前に出た。

「……どうも。初めまして、北丘です」

 軽く会釈をして名乗る界人に朝陽も同じように頭を下げる。

「初めまして。藍島です」

 互いに簡単な挨拶を交わしたものの、どこかよそよそしい空気が残る。

「……この辺りだと例の男がいるかもしれません。ひとまず場所を変えましょう。乗ってください」

 朝陽が周囲を警戒しながら車を示すと、

「……失礼します」

 促された界人は後部座席へ乗り込み、亜佑美は助手席に座った。

 走り出した車内はどこか気まずい沈黙が流れている中、ふいに亜佑美のスマートフォンから着信音が鳴る。

「あ、陽向くんからだ」
「陽向から?」

 朝陽が尋ねると亜佑美は小さく頷いた。

「きっと朝陽くんは運転中だと思って私にかけてきたのかも。出るね」
「はい」

 そう言って亜佑美は通話ボタンを押した。

「もしもし?」
『あ、亜佑美サン? もう兄ちゃんと合流した?』
「うん。今、一緒にいるよ」
『そっか。俺、今××駅にいるんだけど、拾ってほしいんだよね』
「そうなの?」

 亜佑美は電話口に返事をしてから、運転中の朝陽へ顔を向けた。

「陽向くん、今××駅にいるから乗せてほしいんだって」
「分かりました。それならちょうどいいですね。そのままどこか店に入って話をしましょうか。陽向も一緒に」
「うん。それがいいね」

 亜佑美は再びスマートフォンに向き直る。

「陽向くん、これからそっちに向かうから少し待っててくれる?」
『分かった。じゃあ改札出たとこで待ってる』
「うん」

 こうして急遽、陽向とも合流することになり、駅に到着すると近くのコインパーキングに車を停めて三人は陽向の待つ場所へ向かう。

「陽向くん、お待たせ」

 亜佑美の声に陽向がこちらへ振り向くと、その視線が亜佑美や朝陽の後ろにいる界人へと移り、開口一番率直な疑問を口にした。

「……そいつ、誰?」と。
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