恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「……あ、彼は私の同期なの」

 亜佑美がそう紹介すると陽向は界人へ視線を向けた。

「ああ、コイツが……」
「初めまして、北丘です」

 界人が軽く頭を下げると陽向はぶっきらぼうに口を開く。

「どーも。兄ちゃんの弟の陽向です」
「すみません、愛想の悪い弟で……」
「いや、大丈夫です」

 朝陽が苦笑しながらフォローするも、陽向は気にした様子もなく腕を組んだ。

「……それで、何で同期の北丘サンがここに居るわけ?」

 陽向の問いに界人は一瞬亜佑美へ視線を向けると、界人に代わって今日の昼間に起きたことを順を追って説明した。

「……とにかく、ここで話すことじゃないし、どこか店に入りましょう」

 これ以上の話は腰を据えて話した方が良いと朝陽は周囲を見回した後で近くの居酒屋を指差し、四人はそこへ入ることになった。

 店内に入り、個室へ案内されると朝陽と亜佑美が隣に並び、その向かいに界人と陽向がそれぞれ座る。

 飲み物と軽くつまめる料理をいくつか注文し、それらが運ばれてきたところで朝陽が改めて口を開いた。

「まず、今日のお昼に亜佑美さんの後をつけていた男の人に気づいてくださって、ありがとうございました」

 最初に伝えたのは界人への感謝だった。

 思いがけない言葉に界人は目を丸くする。

「いや、そんなに感謝されることでは……」
「そんなことないです」

 朝陽はきっぱりと首を横に振った。

「北丘さんが気づいてくれたおかげで、少なくとも相手がどんな人なのかがある程度分かったんですから」

 その言葉に隣に座る亜佑美も界人へ頭を下げた。

「朝陽くんの言う通りだよ。私からも改めてお礼を言わせて」
「いや、本当に気にしなくていいって」

 そう言いながらも、二人からまっすぐに感謝を伝えられた界人は少し照れたように視線を逸らした。
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