恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 特に行き先を決めることもなく、途中で飲み物をテイクアウトした朝陽は車を走らせ続けた。

 そんな中、朝陽と二人きりでいられる安心感からか亜佑美は少しずつ元気を取り戻しているようで笑顔が増えていく。

「少しは気分が晴れましたか?」

 運転しながら尋ねる朝陽に亜佑美は小さく頷いた。

「うん。朝陽くんが隣にいてくれるし……車の中だからかな。なんだか安心する」
「それならよかったです。今度の休日は少し遠出するのもいいかもしれないですね」
「そうだね。久しぶりにどこか遠くまで行ってみたい」

 付きまといが始まってからというもの二人はデートらしいデートもほとんど出来ていなかった。

 だからこそ目的地も決めずに車を走らせるだけの時間でさえ今の二人にとっては貴重なひとときだった。

 暫くドライブを楽しんだあと二人は洋食屋に立ち寄り夕食を済ませると、そのままマンションへと戻った。

 部屋に入るとすでに陽向が帰宅していた。

「おかえり」
「ただいま」

 いつも通りのやり取りを交わしたあと陽向が亜佑美に封筒を差し出す。

「亜佑美サン宛に手紙が来てたよ」
「あ、ありがとう」

 亜佑美は受け取った封筒を手に首を傾げた。

 差出人の名前が無いことに少し違和感を覚えたものの荷物を置いてから封筒を開封すると次の瞬間――

「きゃっ!」

 亜佑美の悲鳴が部屋に響き、

「どうした!?」
「何があったんですか!?」

 朝陽と陽向が同時に駆け寄った。

 亜佑美は青ざめた顔で手にしたものを見つめていた。

「これ……」

 震える手で差し出された封筒の中には真っ白な紙と一枚の写真が入っていて、白い紙には赤い文字で【こんなにも好きなのに……】と書かれていて、写真を見た二人の表情は一瞬で凍りついた。

 そこに写っていたのは亜佑美と朝陽と陽向と界人の四人で、全員の顔が赤いペンで乱暴に塗りつぶされている。

「……何だよ、これ」
「これ、どういう意味なんだろ……」

 さっきまでの穏やかな時間が一変、亜佑美の顔からは笑顔が消え去っていた。
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