恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 夜景を見に行こうなんて、まるで最初から予定していたみたいな流れだけれど、今日ここへ来ることは会ってから決めたばかり。

「……どうしてそんな場所知ってるの?」

 そんな疑問を朝陽に投げかける亜佑美。

「え?」
「だって、今日ここに来るって決めたの、会ってからだよね?」
「あ……」

 そこで朝陽は少し気まずそうに視線を逸らした。

「その……食べ終わったら帰るだけっていうのは寂しいかなって思って……待ち時間に、行ける所が無いか少し調べたんです。そうしたら夜景が綺麗なスポットがあるって載ってて……」

 最後の方は少し恥ずかしそうに声が小さくなる。

 その姿を見て、亜佑美の胸がじんわりと熱くなった。

「……そっか」

(もっと一緒に居たいと思ったのは、私だけじゃなかったんだ)

 そう思った瞬間胸の奥が満たされた気がして、嬉しさから自然と頬が緩んでしまう亜佑美。

「行きたい!」
「……!」

 亜佑美の言葉に朝陽は一瞬驚いたように目を見開き、それからぱっと嬉しそうに笑った。

「それじゃあ行きましょう!」

 その笑顔につられるように亜佑美も笑って、二人は県境を越えて県外へ。

 目的地までは車で三十分程とあって、夕暮れから夜へ変わっていく街並みを眺めながら、亜佑美はどこか夢みたいだと思っていた。

 そして、こんな風に誰かとの時間を名残惜しいと思ったことが今まであっただろうか、朝陽が相手だからそう思うのか、そんなことを考えながら車に揺られていた。

 辿り着いたのは、小高い山の中腹に作られた展望スポットで、広めの駐車場から少し歩いた先に展望デッキがあり、そこからは街を一望できるようになっている。

 眼下には無数の灯りが広がり、遠くには川沿いの橋やビル群の明かりまで見えて、まるで地上に星空が広がっているみたいに見える。

“恋人たちの定番スポット”として有名なのか、辺りには寄り添って景色を眺めるカップルの姿も多かった。

「……わぁ」

 車を降りて夜景が見える位置までやって来た瞬間、亜佑美は思わず声を漏らした。

「すごい……」
「本当だ……」

 隣の朝陽も感動したように目を見開いている。

 二人の目の前に広がる光景は息を呑むほど綺麗で、暫く言葉も出なかった。

 その中で、亜佑美はそっと隣を見る。

 夜景の光を映した横顔はどこか大人びて見えて、胸がまたきゅっと締め付けられた。

(……格好良い……な)

 そう思ってしまった瞬間、亜佑美は誤魔化すように再び夜景へ視線を戻した。
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