恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 部屋へ入ると亜佑美は靴を脱ぎながら振り返る。

「適当に座ってて。すぐ作るから」
「はい……あ、俺も何か手伝います!」

 律儀にそう言いながら後を追いかけてきた朝陽に亜佑美はくすりと笑った。

「大丈夫だよ。そんなに時間かからないし」
「でも……」
「今日はいっぱい運転してもらったから、藍島くんは休んでて」

 そう言われてしまえば強くは出られなかったのか朝陽は、「分かりました……」と少し名残惜しそうにしながらも素直にソファーへ腰を下ろした。

 その姿を横目に亜佑美は冷蔵庫を開ける。

「えーっと……」

 中を確認し、続けて冷凍庫、更にはパントリーまで覗き込む。

 使えそうな食材を頭の中で組み合わせながら、ふと思い出したようにリビングへ声を掛けた。

「藍島くん、苦手な物とかある?」
「無いです! 何でも食べられます!」

 その返事に少し笑みを零しながら亜佑美はキノコや玉ねぎ、ベーコンを取り出していく。

(すぐ作れるなら……やっぱりパスタかな)

 メニューが決まれば早い。

 キノコの和風パスタと、簡単なオニオンスープにしようと頭の中で思いながら、慣れた手つきで鍋に火を掛け、玉ねぎを切り始める。

 じゅわっとバターの溶ける音と香ばしい匂いが部屋へ広がっていく中、ソファーに座る朝陽は静かにその様子を眺めていた。

 やがてスマートフォンを取り出すと、何かを打ち込み始める。

 その姿を亜佑美はちらりと盗み見た。

(……誰かとメッセージのやり取りでもしてるのかな)

 友人か、仕事関係か、それとも……考え始めると妙に落ち着かなくなる。

 自分には関係ないことなのに胸の奥がそわそわして気が気ではない。

 そんな気持ちを振り払うように亜佑美はパスタを湯切りし、フライパンへ加えていく。

 醤油とバターの香りがふわりと立ち上る中、スープの方も完成し、亜佑美は手を止めて食器棚からお皿を取り出すと、お皿の音が聞こえたことで顔を上げた朝陽はすぐに立ち上がる。

「凄く美味しそうな匂いですね! 俺、運びます!」
「あ、ありがとう」

 こうして二人で料理をローテーブルへ並べ、向かい合わせに座った。
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