恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「いただきます」
「いただきます!」

 挨拶をするとすぐに、朝陽はパスタを一口頬張り次の瞬間、ぱっと瞳を輝かせた。

「美味しいです!」
「ふふ」

 その反応が可愛らしくて亜佑美の表情も自然と和らぐ。

「ごめんね、有り合わせだから、簡単な物しか作れなくて」
「え!? 全然です! 俺、パスタ好きなんで嬉しいですよ!」
「……そっか」

 その言葉が嬉しくて亜佑美の胸の奥がじんわり温かくなる。

 そこから暫くは穏やかな時間を過ごしながら、二人はゆっくり食事を楽しんでいく。

 そして、食べ終えた直後だった。

「あ、そうだ」

 何かを思い出したように朝陽が声を上げてスマートフォンを取り出すと、「これ……」と亜佑美へ画面を向けた。

「こんな感じでSNSにアップしようかなって思うんですけど……大丈夫でしょうか?」
「SNS?」

 亜佑美が覗き込むと表示されていたのは朝陽のアカウント画面で、投稿記事の下書きらしく、そこには昼間食べたパンケーキの写真と共に、
『今日は大切な友人と、パンケーキが人気の喫茶店へ行きました!』という文章が添えられていた。

(……大切な友人)

 その言葉に胸が少しだけくすぐったくなる。

 嬉しいと思う反面、どこか物足りない。

 そんな複雑な感情が頭を過ぎるけれど亜佑美は表情には出さず小さく微笑む。

「うん、問題ないと思うよ」

 そう答えると朝陽はほっとしたように笑った。

「……あ」

 そこでふと、亜佑美は先程から引っ掛かっていたことを思い出す。

「もしかしてさっきスマートフォン触ってたのって……これ書いてたの?」

 それとなく尋ねると朝陽は少し照れたように笑った後、

「はい! その、投稿するの初めてだから木葉さんに確認してもらいたくて」

 真面目な顔でそんなことを言うものだから亜佑美は思わずクスリと笑ってしまう。

「全然変じゃないよ」
「本当ですか?」
「うん。むしろ藍島くんっぽい」
「俺っぽい……?」

 不思議そうに首を傾げる姿が妙に可笑しくて、亜佑美はまた小さく笑った。

「ふふ、何ていうか、ちゃんと丁寧な感じが」
「えぇ……」

 照れ臭そうに視線を逸らす朝陽を見ながら亜佑美は、「それじゃあ私も投稿しようかな」とスマートフォンへ手を伸ばしたその瞬間に着信音が鳴った。
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