恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
「あ、あの……仕事はIT関係で……えっと……」

 言葉を詰まらせながら話す姿に、亜佑美は思わず眉を顰める。

(何あれ……)

 スーツは悪くない。

 けれど着慣れていない感じが丸分かりで、会話もぎこちない。

(あれは無いな)

 優しいのかもしれないし、真面目なのかもしれない。

 でも、それだけだ。

 恋愛対象には絶対ならない。

(あの子、確か年下だったから……せいぜい弟ポジションって感じよね)

 そう思った瞬間、ふいに目が合った。

「あ……」

 彼は驚いたように目を見開き、慌てて視線を逸らす。

 その反応に亜佑美は少しだけ口元を緩めた。

(まあ、見方によっちゃ可愛いけど……彼氏にするとか有り得ない)

 結局、この日の合コンは“ハズレ”だった。

「今日はありがとうございました」

 店先で形式的な挨拶を交わし、流れで数人と連絡先を交換する。

 例の年下の彼――藍島(あいじま) 朝陽(あさひ)とも交換したが、連絡を取ることはないだろうと亜佑美は思っていた。

 それから二週間程が過ぎた休日の昼過ぎ。

「……最悪」

 ベッドの中で荒い息を吐きながら亜佑美は額へ手を当てると、明らかに熱がある。

(風邪とか……何年ぶり……?)

 体温計でも計ってみると、やはり数字はかなり高い。

 ぼんやりする頭でスマートフォンを掴み、薬や飲み物を宅配で頼もうとするが、熱のせいで上手く操作できない。

 何度かタップを間違えた挙句、気づけば発信音が鳴っていた。

(やば……誰かに電話……)

 慌てて切ろうとした、その瞬間、通話が繋がってしまい、

『――もしもし?』

 聞こえてきたのは聞き覚えのある男の声。
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