恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
二人はその後暫く無言のまま歩き続けていた。
先程の出来事が頭から離れず、亜佑美も何を話せばいいのか分からなかったし、朝陽も何も聞いてこない。
ただ、手は繋いだまま。
やがて視界の先に一軒のアパートが見えてくると、それまでどこか張り詰めていた雰囲気がふっと和らいだ。
「あ、着きました、ここです。俺の家」
足を止めて振り返った朝陽の表情はいつもの穏やかなものに戻っていて、陸人に向けていた鋭さはどこにもない。
その姿を見て亜佑美も自然と肩の力が抜けた。
「へぇ……綺麗なアパートだね」
「築浅なので。それなりに家賃はしますけど」
少し照れたように笑う朝陽に、ようやくいつもの空気が戻ってくる。
向かったのは二階の角部屋で、玄関の鍵を開けた朝陽が扉を開く。
「どうぞ」
「お邪魔します……」
亜佑美は少し緊張しながら中へ足を踏み入れ、靴を脱いで案内された先は広めのリビングダイニングだった。
1LDKの間取りらしく、一人暮らしにしては十分な広さがある。
「結構広いね」
「弟が頻繁に泊まりに来るので、広めの間取りを選んだんです」
「弟くん、結構来るんだ?」
「はい。今高二なんですけど、しょっちゅう親父と喧嘩してて、そのたび俺の所へ来るんですよ」
「そうなんだ」
室内は黒を基調としたシックな雰囲気で統一され、ローテーブルもテレビボードも落ち着いた色合いでまとめられていて、余計な物もほとんど置かれていない。
整頓された空間は、どこか朝陽らしさがある。
「適当に座っててください。コーヒー淹れてきます」
「うん」
そう言われた亜佑美はソファーへ腰を下ろし、柔らかなクッションに身体を預けながら改めて部屋の中を見回す。
(ここが朝陽くんの部屋……普段、どんな風に過ごしてるんだろう……)
そんなことを考えていると、亜佑美は何だか少しだけくすぐったい気持ちになる。
少ししてキッチンの方からコーヒーの香りが漂ってくると、
「お待たせしました」
朝陽がマグカップを二つ持って戻ってくる。
ローテーブルへ置くと、自身も亜佑美の隣へ腰を下ろした。
「ありがとう」
「いえ」
二人はそれぞれカップを手に取り、温かな湯気が立ち上るコーヒーを一口飲む。
しかし、その後は自然と沈黙が落ち、静かな部屋の中で時計の秒針だけが小さく音を立てている。
その沈黙を破ったのは朝陽だった。
「あの……」
少しだけ言いづらそうに視線を落とし、
「話したくないなら言わなくていいんですけど……」
一度言葉を切ってから慎重に続けた。
「さっきの人との関係って……」
その言葉に亜佑美の指先が僅かに動き、暫くカップの中のコーヒーを見つめたまま黙り込んでから小さく息を吐くと、
「あの人は……大学生の時に半年くらい付き合った、元カレなの……」
亜佑美の口からそう告げられた。
亜佑美は視線を落としたままマグカップを両手で包み込み、その横顔を見つめながら朝陽は何も言わず次の言葉を待っていた。
先程の出来事が頭から離れず、亜佑美も何を話せばいいのか分からなかったし、朝陽も何も聞いてこない。
ただ、手は繋いだまま。
やがて視界の先に一軒のアパートが見えてくると、それまでどこか張り詰めていた雰囲気がふっと和らいだ。
「あ、着きました、ここです。俺の家」
足を止めて振り返った朝陽の表情はいつもの穏やかなものに戻っていて、陸人に向けていた鋭さはどこにもない。
その姿を見て亜佑美も自然と肩の力が抜けた。
「へぇ……綺麗なアパートだね」
「築浅なので。それなりに家賃はしますけど」
少し照れたように笑う朝陽に、ようやくいつもの空気が戻ってくる。
向かったのは二階の角部屋で、玄関の鍵を開けた朝陽が扉を開く。
「どうぞ」
「お邪魔します……」
亜佑美は少し緊張しながら中へ足を踏み入れ、靴を脱いで案内された先は広めのリビングダイニングだった。
1LDKの間取りらしく、一人暮らしにしては十分な広さがある。
「結構広いね」
「弟が頻繁に泊まりに来るので、広めの間取りを選んだんです」
「弟くん、結構来るんだ?」
「はい。今高二なんですけど、しょっちゅう親父と喧嘩してて、そのたび俺の所へ来るんですよ」
「そうなんだ」
室内は黒を基調としたシックな雰囲気で統一され、ローテーブルもテレビボードも落ち着いた色合いでまとめられていて、余計な物もほとんど置かれていない。
整頓された空間は、どこか朝陽らしさがある。
「適当に座っててください。コーヒー淹れてきます」
「うん」
そう言われた亜佑美はソファーへ腰を下ろし、柔らかなクッションに身体を預けながら改めて部屋の中を見回す。
(ここが朝陽くんの部屋……普段、どんな風に過ごしてるんだろう……)
そんなことを考えていると、亜佑美は何だか少しだけくすぐったい気持ちになる。
少ししてキッチンの方からコーヒーの香りが漂ってくると、
「お待たせしました」
朝陽がマグカップを二つ持って戻ってくる。
ローテーブルへ置くと、自身も亜佑美の隣へ腰を下ろした。
「ありがとう」
「いえ」
二人はそれぞれカップを手に取り、温かな湯気が立ち上るコーヒーを一口飲む。
しかし、その後は自然と沈黙が落ち、静かな部屋の中で時計の秒針だけが小さく音を立てている。
その沈黙を破ったのは朝陽だった。
「あの……」
少しだけ言いづらそうに視線を落とし、
「話したくないなら言わなくていいんですけど……」
一度言葉を切ってから慎重に続けた。
「さっきの人との関係って……」
その言葉に亜佑美の指先が僅かに動き、暫くカップの中のコーヒーを見つめたまま黙り込んでから小さく息を吐くと、
「あの人は……大学生の時に半年くらい付き合った、元カレなの……」
亜佑美の口からそう告げられた。
亜佑美は視線を落としたままマグカップを両手で包み込み、その横顔を見つめながら朝陽は何も言わず次の言葉を待っていた。