恋愛経験ゼロの年下くんが、私の一番になりました
 浴室へ行きシャワーを浴び始めた朝陽は、これまで生きてきた中で一番とも言える程に緊張していた。

 想いを伝えた時も心臓は騒がしかったが、それとは比べ物にならない程に。

(……どうしよう、半ば勢いで泊まるって言ったけど……もう、する流れ……だよな……)

 朝陽は交際経験が無いので即ち、キスは勿論それ以上の行為も初めてな訳で、上手く出来るか、亜佑美に幻滅されないか、そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。

 とにかくまずは心を落ち着けようと頭からシャワーを浴びていく朝陽。

 一方亜佑美はというと、シャワーの音が聞こえる中、脱衣場へ足を踏み入れるとタオルと共に着替えを用意する。

「あの、朝陽くん」
「は、はい!?」
「タオルと一緒に着替え、置いておくから使ってね」
「え? あ、はい……ありがとうございます」

 そしてそれだけ伝えた亜佑美はリビングへと戻って行った。

 声を掛けられ驚いた朝陽は亜佑美の気配が消えたのを確認すると、

(着替え?)

 先程亜佑美が口にした“着替えを置いておく”と言った言葉が酷く気になった。

 そして、浴室のドアを開けてタオルを手に取って身体を拭いてから着替えに視線を向けてみると、そこには男物の部屋着が置かれている。

(……誰の、服なんだろう……)

 それは新品なのだが、今日想いを伝えて両想いになった自分の為に用意してあったとは考えにくく、

(……もしかして、元カレ用に用意してた物、とか?)

 そんな疑問を抱えながら、用意された部屋着に着替えた朝陽はリビングへ戻って行った。

「シャワー、ありがとうございました。それと、服も……」
「あ、その服サイズちょうど良くて良かった」

 部屋着を身に纏った朝陽を前に、亜佑美は安心したように言う。

 朝陽はこれが誰の為の物だったのか聞いていいものなのかを悩んでいると、

「それ、お兄ちゃんが泊まりに来た時用に買ってあったんだけど、最近はなかなか来ないからしまってあったままだったの。サイズ合ってて良かった」

 亜佑美の方から誰の為に用意していた物なのかを教えてくれたことで、朝陽の中にあった悩みは一つ解消されていった。
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