選べなかった恋の続きを、君と紡いで
 莉乃と別れた後、家に帰宅してから別で依頼を受けていた短編小説の執筆をすすめていると、十七時を回った頃に大椛さんからメールが届いた。もしかすると、長編企画書の返事かもしれない。

 すぐに見ようと思ったけれど、一度深呼吸を挟む。

 集中しているうちに、いつの間にか窓の向こうは暗くなっていた。うーんと伸びをしてパソコン前の椅子から立ち上がり、カーテンを閉める。コーヒーを淹れ直してから、ドキドキしつつメールを開いた。『長編企画書について』というタイトルに、ますます緊張が走る。

 無事に通ったかな。通っていたらいいな……。

 期待と不安を織り交ぜたそわそわ感を抱きつつ、メールをクリックする。

 ――『すみません、編集長に見せたんですがあまり感触がよくなくて。練り直しさせてもらえませんか?以下フィードバックをまとめております』

 メールを見た瞬間、胸の奥から軋む音が聞こえた。

「……またダメだった」

 これでもうボツになった案は五つ目だ。

 すぐに了承の旨を返信しようと思うのに、フィードバックファイルに並んだ厳しい言葉の数々を見ていると呼吸が浅くなってくる。

 正直、半分はダメかもしれないと思っていた。でも、もう半分……いや、半分以上、今度こそ企画が通るかもしれないという希望を抱いていた。今回こそ。そんな自信と期待を持って直した企画だったからこそ、砕け散った衝撃がなかなか消えない。会議にかける前に門前払いされるレベルだったのか、とぐっと下唇を噛む。暗い海の底に体が沈んでいくような、みぞおちのあたりが潰れて息が浅くなるような、そんな感覚に溺れてしまいそうだった。

 世間と編集部から求められていたものを選んだつもりだったけれど、感触がよくないということは私の判断は正解ではなかったのだろう。

 たかだか五回でこんなに落ち込むなんて、プロとして情けないな……。

「やっぱり方向性が間違ってるのかな……」

 期待されていたものに沿えなかったのだろうか。選んだテーマを間違えていたのだろうか。

 ぐるぐると負の感情が巡るけれど、落ち込んでいる場合じゃない。企画が通らなければ書けないし、何も進まない。

< 10 / 74 >

この作品をシェア

pagetop