選べなかった恋の続きを、君と紡いで
「じゃあ、本格的に忙しくなる前に行きたいところがあるんだけど」
「え、どこどこ?」
「文豪とコラボしてるアフタヌーンティー」
「何それ、気になる!」
「そう言うと思った」

 悪戯を思いついた子どものように口角を上げた汐月くんから、すぐにメッセージで詳細が送られてくる。有名ホテルのカフェで開催される企画らしく、名だたる文豪たちの作品をイメージしたメニューが楽しめるらしい。

 赤信号になったので、足を止めてお互いスケジュールを確認する。私はこの仕事を始めてからずっと使っている手帳。汐月くんはスマートフォンのスケジュールアプリ。しばらくは締め切りに追われるデスマーチ月間があるので、それを無事に乗り切った十一月中旬の日曜日に一緒に出掛けることになった。

 約束の日程を決めるだけで心が躍る。

 この日を楽しみに仕事も日常も乗り切れそうな気がしてくる。意欲が下がっているわけではないけれど、苦しみを乗り超える力をもらい導かれている自分はまるで鼻先ににんじんをぶらさげられた馬のようだな、と心の中で笑ってしまう。

 それだけじゃない。新幹線で再会した時よりも、あきらかに汐月くんの笑顔も増えているし、会話も昔のように自然と弾むようになっていた。汐月くんが楽しそうだと私の胸もいっぱいになるのだ。

「なんか嬉しそうだな」
「アフタヌーンティー楽しみだなあと思って」
「ああ、俺も。この日を楽しみに乗り超えられそう」

 隣を見上げると、汐月くんが穏やかな笑みを口元に湛えていてまたドキっと鼓動が反応してしまった。

 そっか、同じこと考えていたんだ。私との約束が汐月くんの糧になれている。

 たったそれだけ。傍から見れば些細なことかもしれないけれど、私にとっては嬉しくてたまらなかった。
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