選べなかった恋の続きを、君と紡いで
 そんな当たり障りのない話をした後、会話がどちらからともなく止まってしまった。

 短い沈黙が流れた後、汐月くんの表情がどことなく気まずそうに揺れたのがわかる。

 何か話題を……。そう思ったものの、情けないことにすぐに浮かばない。久しぶりだから積もる話があるはずなのに、大人になると相手の事情が見えないうちは気を遣い、タイミングや踏み込んでも大丈夫な位置を探ってしまう。それに車内が静かであることも拍車をかけて、あまり長々と話すタイミングではない気がした。中学時代は延々とくだらない話ができたのに、時の流れとブランクのせいで距離感が掴めない。

 あの頃はどんなふうに話していたっけ。

 と、胸ポケットからスマートフォンを取り出した汐月くんが、軽く眉をひそめた。

「ごめん、仕事の電話だ。デッキ行ってくる」
「いってらっしゃい」

 汐月くんを見送り、一人になってから小さく息を吐き出した。

 まさか、こんなところで再会するなんて本当に想定外だった。

 もう二度と会えることはないだろうと思っていたから、まだ胸が高揚感と驚きでドキドキしている。元気そうな顔が見られて嬉しい。

 でも、昔みたいに気軽に話せなかった自分に、月日の流れを感じてしまった。寂しいけれど、大人になるとこういうものなのかもしれない。

 その後汐月くんは戻ってきたけれど、やはり車内ということもあってあまり話は弾まないままあっという間に品川に到着してしまった。

「汐月くんは降りない?」
「ああ、俺は東京駅まで」
「そっか、じゃあ……」

 丁寧に一度腰を上げ、私が通る道を作ってくれた汐月くんにお礼を言う。

「あっ……」

 そうだ、連絡先。今だったらスマートフォンもあるし聞けるよね。

 そんな考えが頭に浮かぶけれど、通路を挟んだ逆側の男性が早く降りたそうにしていることに気づき、慌てて前に一歩詰めた。そこから軽く振り返るけれど、汐月くんももう座席に座っていて後頭部しか見えない。

 間もなく品川です。山手線、京浜東北線――……。

 耳馴染みのいいメロディとアナウンスに続いて、見慣れたホームが車窓を流れていく。

 後ろ髪が引かれるけれど、降りないと。

 小さな後悔が胸に降り積もったままバッグを背負い直し、前の人に続くように、そして流されるようにして歩を進めた。

< 2 / 74 >

この作品をシェア

pagetop