選べなかった恋の続きを、君と紡いで
笑い合いながら本屋を回った後、書店を出て、駅ビルの中を歩く。
「新作の準備は順調?」
「うん、今度取材しに京都に行くんだ」
「え、そうなのか?」
思ったよりも驚いた顔をされた。
「長編企画の舞台が京都で。写真資料はあるんだけどせっかくだから行こうと思って。帰省はしないから一人でホテルに泊まるんだけどね」
「……ちなみにいつ?」
「えーっとね、ここの土日」
十二月頭の土日だと伝えると、汐月くんが何かを考えるように顎に手を当てた。その反応に首を傾げる。
「実はその翌日の月曜日、出張で京都に行くんだ」
「えっ、そうなの?」
「うん、うちの漫画イベントが京都で開催されるからそれに行くんだよ。だからもし……」
汐月くんが言葉を止めて、じっと私の目を見つめた。
「七瀬さんがよければだけど、俺が前乗りするから一緒に回らないか?」
つまり汐月くんと旅行。しかも思い出の地元で。
想像するだけで胸が弾んでしまう。気づけば口角が上がってしまっていた。
「ありがたいけどいいの?」
「ダメだったら誘わない。むしろ邪魔じゃないか?」
「ぜんぜん! 嬉しいよ」
「よかった。ちなみにどこに取材に行く予定とかあった?」
「えっとね」
神社に水族館、繁華街。名所を上げていくと、汐月くんが「じゃあ、カメラ係は任せて」と頼もしい言葉と一緒に微笑んでくれる。
土曜日に一緒に新幹線に乗って京都に行き、土日に観光。私は日曜日に先に帰るけれど、汐月くんは月曜日の仕事に向けてもう一泊するスケジュールが決定した。
「まさか同じタイミングで京都に行くなんて。仕事とはいえ、私たち偶然が多いね」
「ホントにな」
偶然が運命だったら……。そんな願望を密かに芽生えさせてしまう。
「七瀬さん、もう土曜日のホテルとった?」
「うん、ここ。京都駅の近くでおさえたよ」
「じゃあ、一緒のところにするよ。今見てもいいか?」
「もちろん。早い方がいいもんね」
行き交う人々の邪魔にならないように端に避けてから立ち止まった汐月くんが、スマートフォンを取り出して検索し始める。
まさか汐月くんと旅行に行けるなんて。仕事の取材のつもりだったので、思いがけない幸運に気分が高揚する。汐月くんがホテルを検索する様子を隣でわくわくと見ながらふと考える。
待って。もしかして、同じ部屋?