選べなかった恋の続きを、君と紡いで
ずっと部屋に緑がある生活に憧れてはいた。けれど私も、汐月くんよりももっと軽い気持ちだけれど枯らす不安を持っていて踏み出せなかったのだ。
でも、一人じゃなければ汐月くんももう一度手を伸ばしたいという勇気が湧いて来るかもしれない。勝手なおせっかいだったけれど、もし逆なら――心強いと思ったのだ。
汐月くんはためらうように花を見て、それから今度は私を見る。
「……俺も、育ててみようかな」
「じゃあ、成長を報告し合うのってどう?」
「楽しそうだな」
汐月くんの表情から、子どもの頃の思い出話をしていた時の険しさが抜け落ちて胸を撫で下ろした。
よかった。無理している様子はなさそう。押し付けていたらどうしよう、という不安がなかったわけではなかったので安堵した。
「この花はなんていうの?」
「チャノキだよ」
「へえ。あっ、ホントだ。書いてた」
雪のように白い色をした可憐な花の傍には、ツバキの仲間だと説明が書かれている。控えめに、けれどかわいらしく咲く花は美しかった。
「ちなみにおすすめってある?」
「んー……育てるならサボテンとか観葉植物とか。あまり水をやらなくていい品種も多いから、初心者には向いてると思う」
本人に自覚があるのかはわからないけれど、響く声は明るい。詳しいところを見ると、やっぱり今も花についていろいろ勉強する機会があったのだろうか。
「じゃあ、サボテンにしようかな。汐月くんはどうする?」
「俺もサボテン……いや、パキラ……」
うーんとしばらく悩んだ後、私たちはそれぞれ小さなサボテンを選んだ。汐月くんより先にカゴにふたつ入れると、横から「えっ」と困惑した声が響く。
「看病のお礼に受け取って」
「いや、あれは俺がしたくてしたのに」
そこで言葉を止めた汐月くんが、ふっと口元を緩める。
「でも、七瀬さんはここで受け取らなかったらずっと言ってきそうな気がする」
「よくわかってる!」
「わかってきた。じゃあ、お言葉に甘える。ありがとな」
大事にするよ、と汐月くんが真面目な声を響かせる。
小さなことかもしれない。
それでも汐月くんが笑ってくれたこと、好きなものに手を伸ばしてくれたことが私の胸にたしかな熱を灯していた。