選べなかった恋の続きを、君と紡いで
3
お互い仕事を乗り越えた十二月の頭。指折り数えて待ち望んだ旅行の日はあっという間に訪れた。
降り立った京都駅は、紅葉の時期をほんの少し過ぎたもののたくさんの人で賑わっていた。新幹線乗り場がある改札から出て、ホテルがある方向へと歩いていく。今日はまずホテルに荷物を預け、その後水族館に行く予定だ。
「なんか一緒に新幹線に乗ったことがまだ変な感じ」
「そうだな。偶然会った日が遠い昔みたいだ」
顔を見合わせて、ふふっと笑い合う。
以前偶然隣合って乗った時は、連絡先を聞かずに後悔した。それに、久しぶりすぎて気まずさもあった。そんな時間が嘘のように今は自然体で、まるで学生時代に戻ったように笑い合えている。
降り立った水族館の最寄り駅。そこは公園が併設されていることもあり、たくさんの子どもたちで賑わっていた。散歩を楽しむ犬やサッカーをして遊ぶ高校生らしき集団もいて微笑ましい。そこを通り過ぎて水族館に入ると、汐月くんが「そういえば」と切り出した。
「ここって昔から駅あったっけ?」
「あ。比較的新しい駅だよ。もしかすると、汐月くんが引っ越した後にできたかも」
「そうだったのか」
汐月くんが静かに、駅のある方向へと視線を投げる。
新しくできた駅だけではない。いつの間にか閉店してしまった馴染みの店。コインパーキングがなくなって代わりにできた大きなマンション。街の景色はいつも気づかない間に変わっていく。
街中を歩く中でそういった変化に触れる度、懐かしさと同時にもう戻らない寂しさのようなものを抱いていた。
「景色が変わるのって寂しいこともあるけど、新しい駅は進化って感じがするな」
チケットを財布に仕舞いながら、汐月くんがぽつりとつぶやいた。
「進化?」
「うん、時代に合わせて良い方向に変わっていくのはいいことかなって。実際に変わってみないとそれが進化かどうかはわからないけど、ずっと同じままだと変化できることさえも知らないままなんだなって」
どう転ぶかわからない。それでも転んだ先に、前向きな選択肢が存在することもある。汐月くんの柔軟性のある言葉が、じんわりと胸に沁みた。
汐月くんと再会した時、最初は大人になったな……と変化を寂しく思ってしまっていた。けれど話してみれば中身にはあの頃の汐月くんがしっかりと残っていて、それは郷愁を誘われる変化だけではない。見方を変えれば、間違いなく進化でもあった。人は同じままではいられない。街の景色も変わる。けれど、それを怖い。切ないと思わなくてもいいのかもしれない。
じゃあ、私はどうなんだろう。進化という言葉に、自分のことを考える。
私はちゃんと良い方向に変容できているのかな。なぜだか、ずっと同じ場所で立ち止まっているような気がする。やっぱり作家として一人前だと言えない今の状況が苦しくて、そう感じているのだろうか。
降り立った京都駅は、紅葉の時期をほんの少し過ぎたもののたくさんの人で賑わっていた。新幹線乗り場がある改札から出て、ホテルがある方向へと歩いていく。今日はまずホテルに荷物を預け、その後水族館に行く予定だ。
「なんか一緒に新幹線に乗ったことがまだ変な感じ」
「そうだな。偶然会った日が遠い昔みたいだ」
顔を見合わせて、ふふっと笑い合う。
以前偶然隣合って乗った時は、連絡先を聞かずに後悔した。それに、久しぶりすぎて気まずさもあった。そんな時間が嘘のように今は自然体で、まるで学生時代に戻ったように笑い合えている。
降り立った水族館の最寄り駅。そこは公園が併設されていることもあり、たくさんの子どもたちで賑わっていた。散歩を楽しむ犬やサッカーをして遊ぶ高校生らしき集団もいて微笑ましい。そこを通り過ぎて水族館に入ると、汐月くんが「そういえば」と切り出した。
「ここって昔から駅あったっけ?」
「あ。比較的新しい駅だよ。もしかすると、汐月くんが引っ越した後にできたかも」
「そうだったのか」
汐月くんが静かに、駅のある方向へと視線を投げる。
新しくできた駅だけではない。いつの間にか閉店してしまった馴染みの店。コインパーキングがなくなって代わりにできた大きなマンション。街の景色はいつも気づかない間に変わっていく。
街中を歩く中でそういった変化に触れる度、懐かしさと同時にもう戻らない寂しさのようなものを抱いていた。
「景色が変わるのって寂しいこともあるけど、新しい駅は進化って感じがするな」
チケットを財布に仕舞いながら、汐月くんがぽつりとつぶやいた。
「進化?」
「うん、時代に合わせて良い方向に変わっていくのはいいことかなって。実際に変わってみないとそれが進化かどうかはわからないけど、ずっと同じままだと変化できることさえも知らないままなんだなって」
どう転ぶかわからない。それでも転んだ先に、前向きな選択肢が存在することもある。汐月くんの柔軟性のある言葉が、じんわりと胸に沁みた。
汐月くんと再会した時、最初は大人になったな……と変化を寂しく思ってしまっていた。けれど話してみれば中身にはあの頃の汐月くんがしっかりと残っていて、それは郷愁を誘われる変化だけではない。見方を変えれば、間違いなく進化でもあった。人は同じままではいられない。街の景色も変わる。けれど、それを怖い。切ないと思わなくてもいいのかもしれない。
じゃあ、私はどうなんだろう。進化という言葉に、自分のことを考える。
私はちゃんと良い方向に変容できているのかな。なぜだか、ずっと同じ場所で立ち止まっているような気がする。やっぱり作家として一人前だと言えない今の状況が苦しくて、そう感じているのだろうか。