選べなかった恋の続きを、君と紡いで
その後は京都駅近くのホテルに戻った。汐月くんとは宿泊階が違ったのでエレベータ―の中で別れたけれど、他の宿泊客もいてぎゅうぎゅうだったのであっさりした別れになってしまった。
用意された部屋に入り、ベッドに腰を下ろした私は、そのままドサッと背中から倒れ込む。
「楽しかったなぁ……」
興味深そうな顔で水槽を覗き込んでいた汐月くん。イルカが跳ねた時の子どもみたいな無邪気な横顔。クラゲのことを教えてくれた時の真剣できらきらした眼差し。湯葉と魚を合わせた料理の美味しさに感動し合ったこと。アルコールでほんの少し柔らかくなった活舌。帰り道、人が多い場所でそっと腕を引いてくれたこと。
閉じたまぶたの裏に、ひとつひとつの思い出とともに幸せな気持ちが蘇ってくる。寝返りを打ってみても、頭の中が汐月くんで埋め尽くされている。
取材旅行ではあったけれど、同じくらい汐月くんとの時間を大満喫してしまった。
「はぁ、眠れるかな……飲み物でも買いに行くか」
スマートフォンに繋がったストラップを首から下げ、財布だけを持って部屋を出る。酔いと気持ちを冷ますため、飲み物でも買おうと部屋を出て自販機がある階にたどり着くと……。
「七瀬さん?」
「汐月くん!?」
振り返った先客は、なんと汐月くんだった。
「びっくりした。汐月くんも飲み物買いに?」
「ああ、驚いた」
「気が合いすぎるね」
「ほんとにな」
表面では笑い合いながらも、心の中は大騒ぎだった。以心伝心。偶然。必然。いや、運命? 新幹線での再会やこれまで気持ちが重なった時のことを思い出して、都合のいい期待を抱いてしまう。
「戻ったらもう寝る?」
「ううん、ちょっと酔い覚ましもしたいからまだ起きてるつもりだけど……」
自販機の光から、汐月くんに視線を移す。何か言いたげな眼差しに、期待をまとった心臓が甘い音を立てる。
「もし酔い覚ましなら、テラスに行ってみないか?」
「行きたい!」
「行こう」
即答した私に、汐月くんも笑う。