選べなかった恋の続きを、君と紡いで
 休みの日ということもありイベントが開催されていて、人でごった返した近くの公園。そこで小さな子どもがぐすぐすと泣いていた。

 小学生くらいだろうか。女の子は声を上げず、でもぽろぽろと溢れ続ける涙を必死に拭いながら、あたりをしきりに見回していた。もしかすると迷子かもしれない。

「ねえ、汐月くん……」

 迷いながらも声をかけると、汐月くんも同じことを思っていたのかひとつ頷きを返した。怖がらせないようにゆっくりと女の子に近づく。

「こんにちは。どうしたの、お母さんとはぐれちゃったかな?」

 女の子が涙で濡れた顔で見上げてくる。目線を合わせるように膝を曲げると、汐月くんもその横にしゃがむ。

「うん、お母さんいなくなっちゃった……」

 扇状のまつ毛に溜まった涙が、きらりと光る。

 先に名乗ると、女の子は「マナ、5歳」と自己紹介を返してくれた。マナちゃんはぬいぐるみ型のクマのポシェットをぎゅっと小さな手で握り締めていて、その心細そうな様子に胸が痛くなった。

「たしか向こうに交番があったな。いや、でも運営の人に言うべきか?」
「そうだね。マナちゃん、そこまで歩けそうかな?」
「でも、おかあさんがここにいてって……」
「じゃあ、お姉さんかお兄さんがスタッフさんを呼んでくるよ。マナちゃんはここで待てる?」
「や、やだ。一緒にいて……!」

 ふるふるとマナちゃんが首を横に振る。私と汐月くん、どちらかが少しでも動こうとすうと不安そうに顔を青ざめさせた。

 汐月くんと顔を見合わせる。マナちゃんはここから移動するのも、私たちどちらかがいなくなるのも不安らしい。

 子どもからすればお母さんに言われた約束はちゃんと守りたいというのもわかる。それにただでさえ不安な思いをしている子の心をこれ以上ざわめかせるというのも気が引けた。運営スタッフさんに電話をすることも考えて調べてみたけれど、どうやら当日この場所に電話は繋がらないらしい。

 腰を伸ばして立ち上がった汐月くんが、真剣な顔で人波に目を向ける。それからハッと弾かれたようにすぐ傍にいた家族連れに声をかけた。

「すみません、運営スタッフさんを呼んできてもらうことってできますか?」
「え?」

 家族連れのお父さんらしき男性が、きょとんとする。私も一瞬驚きながら汐月くんを見上げる。マナちゃんがきゅっと私の手を握った。

「この女の子が迷子のようなんですが……」

 自分たちがここでマナちゃんを見ているから、その間によければ運営スタッフさんに声をかけに行ってくれないか……。そう事情を説明すると、お父さんとお母さんらしきふたりは快く引き受けてくれた。

 なるほど。それならマナちゃんも安心するし、お母さんも見つかるかもしれない。汐月くんの機転に安堵と尊敬の念を抱く。
 汐月くんが再びしゃがみこんで、不安そうに見上げてきていたマナちゃんと視線を合わせた。

「マナちゃん。ここで待ってようか」
「うん……」
「大丈夫。お母さんに会えるよ。もう少しだけ待てる?」

 こくこくとマナちゃんが頷く。私もハッとして、マナちゃんに声をかけた。
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