選べなかった恋の続きを、君と紡いで

「挑戦といえば。そういえば創作系のお守りがあるって聞いたことがある気がする」
「えっ、そうなの?」
「ああ、もし気になるなら神社の人に聞いてみるけど」

 汐月くんの言葉に甘えて聞いてもらうと、帰り道にあるもうひとつの社務所に売っていると教えてもらえた。繊細な造りの美しいお守りを授かって、神社を後にする。

 ざくっとブーツのヒールが落ち葉を踏んだ。風の心地よさを感じながら世間話を重ねていると、小川の前で写真を撮っていた男女ふたり組に「あのー……」と声をかけられた。

「すみません、写真お願いしてもいいですか?」
「もちろんです」

 立ち止まって、笑顔でスマートフォンを受け取る。そのタイミングで昨日汐月くんが撮ってくれた綺麗な写真を思い出して隣を見上げた。

「汐月くん、よかったらお願いしてもいい? 写真上手だから」
「わかった」

 紅葉が始まっている木を背景にしてほしいというふたりの要望を叶えるように、汐月くんがスマートフォンを構える。

 最初は少し緊張していたのか硬かった。けれど、二枚、三枚と撮るうちに表情が明るくなっていく。すごく楽しそうだ。

「ありがとうございます! わ~、綺麗! お上手ですね」
「いえ、そんな。でも気にいってもらえたならよかったです」

 控えめに、いつも通り短い言葉ながらも、やっぱり答える声色も弾んでいる気がする。はにかむ汐月くんを見ていると胸の中が温かな気持ちで満たされた。

「よければおふたりも撮りましょうか?」

 彼女のほうからそんな提案をされ、汐月くんの顔色を窺う。

 正直撮りたい。せっかくなら撮ってもらいたい。でも、昨日のことを思い出すと嫌かもしれない……。うずうずそわそわしながら答えをためらっていると、汐月くんも私を見た。朗らかに唇を緩められる。

「じゃあ、ぜひ。七瀬さん、いい?」
「あっ、もちろん」
「では、ぜひぜひそこの綺麗な木の下で!」

 汐月くんのスマートフォンを渡した後、女性に促されて、紅葉が始まりかけている木の下へと移動する。

 こうして隣に立つと改めて汐月くんの背の高さを実感する。薄めのコート越しに体が触れ合いドキッとして、思わず一歩退いてしまった。我ながら動きが不自然すぎる。

「もう少しだけ寄ってもらっていいですか?」
「あっ、はい!」

 答える声が裏返る。恥ずかしい……と思いながら、一歩前に戻った。たかが写真を一枚撮るだけでどれだけ浮かれているんだろう。

「ポーズどうする?」
「ピース……?」
「だよな。無難に一番いい」

 汐月くんが笑みをこぼすだけで、暑いわけじゃないのに変な汗が背中ににじむ。ドキドキドキ。心臓の音が速くなるのを感じながら前髪をさっと直してスマートフォンのほうを向いた。

「はい、撮りますね~」

 女性の合図で、肩を並べてピースする。数枚撮ってくれた後、手渡されたスマートフォンを汐月くんと一緒に覗き込んだ。ちょっとだけぎこちない笑みとピース。でも、どう見ても幸せに満ち溢れた顔をしていて自分でも驚いてしまった。

 そして隣に立つ汐月くんがあまりに格好良い。息が止まるかと思った……。

「どうですか?」

 女性に尋ねられて、見惚れていた私は我に返る。

「すごく綺麗に撮ってくれてありがとうございます」
「よかった! こちらこそありがとうございました」

 満足そうに神社の方向へと歩いていくふたりを見送る。この写真、宝物にしよう。

 そんなことを考えながら汐月くんを見れば、去っていくふたりを見送ってすぐ、またスマートフォンに視線を落としている。写真を目に映す横顔が優しい。

「汐月くん大丈夫だった? 写真、苦手じゃ……」
「そうだったんだけど、今は結構嬉しい。思い出に残るのっていいな」

 微笑みながら顔を上げた汐月くんと視線が重なった。満ち足りた眼差しに鼓動を跳ねさせていると、腕がそっと伸びてくる。ドキッ。水紋が広がるみたいに、ときめきがまた強まっていく。

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