選べなかった恋の続きを、君と紡いで
次はお寺を巡り、商店街で食べ歩きをし……取材兼汐月くんとの時間を楽しむ旅行はあっという間に終わりへと向かった。
汐月くんは仕事でもう一泊するため、私だけが先に東京へと戻ることになっている。レンタカーを返却し、日が暮れ始めた頃、京都駅まで戻って来た。
汐月くんが新幹線の乗り場まで見送ってくれるというのでお言葉に甘えることにして、一緒に駅の中を歩く。申し訳ないと思ったけれど、一秒でも長く一緒にいたかった。
あっという間の一泊二日だったな……。二日間も一緒にいたのに、別れるのが寂しい。この時間が終わってしまうことが名残惜しい。
空が暗くなり、京都タワーがきらきらと光り始める。夜の訪れとともに新幹線の時間が刻一刻と近づいていることが切なくなってくる。満喫してたくさん笑った分、ここから一人になると思うと寂しさが胸を刺した。
楽しい予定のために日常や仕事を頑張れる。原動力にできる。たとえば莉乃とランチに行く前。友だちと遊ぶ約束の前。けれど、その予定が終わった後、しばらく余韻の中に浸ってしまうのも昔からのクセだった。
汐月くんとの時間もまさに糧であり、時間が止まってほしいと願わずにはいられない大切で特別な瞬間。普段家に引きこもっていることもあって、たくさん歩いたから体は疲れているけれど心は充実感でいっぱいだ。むしろ足の疲れさえも思い出として心に刻まれているみたいで嬉しかった。
「お土産どうしようかな」
とはいえ、せっかくの旅行は笑顔で終わりたい。気持ちを切り替えるようにつぶやくと、隣を歩いていた汐月くんが軽く首を傾げる。
「友だちに?」
「うん、莉乃とあと大椛さんに。抹茶が好きだって言ってたからそれ系かなあ」
「そういえばこの前知り合いに聞いたおすすめのフィナンシェがある。見に行ってみる?」
「気になる! いい?」
「もちろん、案内するよ。そうだ、こっちから行こう。七瀬さんに見せたいものもあって」
「見せたいもの?」
きょとんとすると、汐月くんが茶目っ気のある笑みを口元に湛えた。
「到着してからのお楽しみ」
「それは楽しみすぎる……!」
わくわくと胸を弾ませながら、汐月くんについていく。
エスカレーターをのぼった先、少しひらけた場所では大きなクリスマスツリーがきらきらと輝いていた。
「綺麗……! そっか、もうそんな時期なんだ」
「時が流れるのが早すぎる」
「わかるよ」
思いきり頷く。年々月日の流れが早くなっているように感じるのは充実しているからだろうか。子どもの頃とは違い新しい体験が減り、新鮮味がなくなるからそう感じるようになるとどこかで聞いたことがあるけれど。
汐月くんとの時間も大好きな仕事も、私にとっては新鮮で、充実していた。だから前者だったらいいなと思う。
それにこの煌びやかで華やかな景色を一緒に見たいと思ってくれた。私に見せたいと思ってくれていた。その事実が胸を柔らかく、甘く打ってくる。
行き交う人々が大きなツリーを見上げながら、写真を撮ったり、笑い合ったり、それぞれ思い思いに目に焼きつけている。
「東京のイルミネーションももうすぐだね」
「そのことなんだけど、三週間後のこの日、一緒に行かないか?」
「え、行きたい!」
日付を見る前に返事をしてしまった自分に若干恥ずかしくなりながら、カバンから手帳を取り出す。
三週間後……とカレンダーを目で追ったところでハッとした。誘われた日はクリスマスイブ。ドキドキと鼓動が速まるのを感じながら汐月くんを見上げると、かすかに微笑まれた。耳朶がほんの少しだけ赤い……気がする。