選べなかった恋の続きを、君と紡いで
「もし、予定がなかったらだけど」
「……だ、大丈夫」
「じゃあ、仕事終わりに待ち合わせよう」
そうつぶやいた汐月くんの表情がホッとして見えるのは気のせいだろうか。待ち合わせて晩御飯を食べて、それからイルミネーションを見に行く……と予定を話している間も、私の心は落ち着かない。
さすがにクリスマスイブに誘われたら、意識せざるを得ない。さっきの反応からして日付に気づいていないと思えないし、食事に行くならべつに他の日だってかまわないはずだ。普段はこのあたりの日が空いているから、と話し合って食事に行く日を決めているのに、ピンポイントで提示されたのだ。
もしかして、汐月くんも私と同じ気持ち? いや、考えすぎ? ぐるぐると期待と自制が行ったり来たりする。平静を装って話してはいるけれど、頭の中は大混乱だ。
その日まではお互い年末進行もあり会えそうにない。ひとまずクリスマスイブは、何度か行ったことのある隠れ家的なダイニングバーで食事とお酒を楽しむ約束をした。
東京に戻ってすぐ、明日からも仕事漬けの毎日だけれど、楽しみな予定があるからやっぱり頑張れる気がする。さっきまで寂しいと思っていたのに次の約束ができたとたんこれだ。単純すぎる……!
「そうだ、帰る前にこれ」
汐月くんがバッグから取り出したのは、小さな袋だった。水族館のロゴが入ったそれを「ハイ」と優しく手に乗せられる。
促されて開けてみると、中にはアザラシのマスコットキーホルダーが入っていた。
「かわいい……! これ、水族館で一緒に見たマスコットだよね?」
すれ違った子どもが抱き締めていたサッカーボールほどのサイズのぬいぐるみ。
あの後お土産屋で見たら、バッグにつけられるような小さなマスコットサイズもあったのだ。色は白だけではなく青やピンク、黄色……色とりどり揃えられており、首元にリボンがついていたり頭に花の飾りがついていたり、いろんなアザラシがいた。可愛くてぎりぎりまで迷ったものの結局買わず、けれど実は後ろ髪を引かれていた。
「いいの……?」
「俺が買いたくて」
もしかして、私がかなり迷っていたことを見抜かれていたのかもしれない。汐月くんの気持ちが嬉しくてぎゅっと包むようにマスコットを握り締めた。
「ありがとう。大事にする……」
汐月くんへの恋心がまた強く育ったその時だった。
「律さん?」
ふいに雑踏の中で、汐月くんを呼び止める声がした。