選べなかった恋の続きを、君と紡いで
「っ、悪い。勝手に覗き込んでた」
「あ、ううん、それはぜんぜん……」
汐月くんはハッとしたようにそう言うけれど、退こうとしなかった。
私もまるでその場に縫い付けられたように動けなくない。
深海を思わせる光を反射させた色素の薄いグレーの瞳に、固まる私が映り込む。ドクンドクンと心臓の鼓動が大きく、早く。汐月くんに聞こえてしまいそうなほど激しく波打つのが自分でもわかる。
それでも、目が逸らせなかった。
汐月くんの顔がゆっくりと近づいてくる。私もまるで吸い寄せられるように、顔を寄せた。大きな手が耳元の髪をそっと耳にかけてくれた。月灯りを連想させる穏やかな香りにふわりと包まれた。
もしかして、キス……?
距離が縮まるたび、胸の裡を叩く期待が大きくなっていく。
汐月くんも私と同じ気持ちだったの? もしそうだとしたら……。甘い予感に包まれながら、応えるようにゆっくりと目を閉じた。
一秒、二秒。
永遠にも感じられるような時間が過ぎていき、人々のざわめきがどこか遠くに聞こえる。
けれど、どれだけ待っても、温もりは唇に落ちてこない。
「……ごめん」
ぽつり。
小さく落ちた言葉に、まぶたを上げる。