選べなかった恋の続きを、君と紡いで
汐月くんは目を背けることなく真正面から私を見つめながら、眉間に深い皺を寄せていた。頬のあたりに触れていた手がゆっくりと離れていく。
汐月くんの目線が揺れた瞬間、我に返った。
もしかしてキスじゃなかった? 私の勘違い?
旅行の時、落ち葉をとってくれたことを思い出す。
今日も汐月くんはそういうつもりじゃなかったのに、私だけが意識していたのかと思うと、頬から耳にかけてカッと燃えるように熱くなった。
恥ずかしい。間違えた。
期待していたのも意識していたのも、全部私だけだったのに。勝手に突っ走ってしまった。
「……こんな中途半端なこと、今するべきじゃなかった」
汐月くんの硬い声に、ますます顔中が熱を帯びていく。
「こ、こっちこそごめん……!」
絞り出した声が少し震えていたのが自分でもわかったから、慌てて笑顔を深めた。私が選択を誤って勝手に誤解しただけなのに気を遣わせたくない。
「えーっと、さっき言ってた写真なんだけどね」
情けない顔をした自分を見られたくなくて、うつむいてスマートフォンに視線を逃がした。隣から目線を感じるけれど、やっぱり顔は上げられない。手が震えそうになったからぎゅっと力を入れると指先が白くなった。
「汐月くんがおいしいって教えてくれたスコーンのお店、行ったから写真を見せたくて」
「ああ、ここも行ってくれたんだ。間違いない美味しさだよな」
「そう、すごくおいしかった」
心臓の音がうるさくて、自分の声が遠く、小さく聞こえる。
心ここにあらずのまま会話を繋げ、ようやくスマートフォンの画面から目線を上げると、汐月くんの横顔はもう普段と変わらなかった。涼しげなまま、さっきのことなんてまるで何もなかったかのように、画面にじっと視線を落としている。
ずきりと胸が鈍く痛む。
必死に糊塗しようとする私とは裏腹な様子を見ていると、意識したことだけではなく、こうして引きずっているのも自分だけだと浮き彫りにされているようだった。