選べなかった恋の続きを、君と紡いで

 通話を切った後も、大椛さんの明るい声が耳に残っていた。

 まだ少し心臓がドキドキしている。自分のやりたい方向性が見えて定まったこと。それを口にできて、受け入れてもらえたこと。チャンスをもらえたこと。踏み出せたこと……。高揚感とふわふわした気持ちが入り混じっていて、片手で胸を押さえる。

 売れるもの。世間から求められているもの。それを作らないといけないことは理解しているし、したいとも思う。けれど、挑戦したい気持ちも私の中にちゃんとあったのだ。無意識に押し込んでいたその殻を今破くことができた気がした。

 もう片方の手で、ぎゅっとスマートフォンを握り締める。

「正解じゃなくても、私がしたいこと。私が求めてること……」

 視線を上げると、またアザラシのぬいぐるみが目に入った。

 自分が望んでいること。今求めていること。 

 ……汐月くんの気持ちが聞きたい。友だちのままじゃやっぱり嫌だ。

 汐月くんの気持ちがわからないのなら聞くしかない。聞きたい。たとえ同じ思いじゃなかったとしても訊かないと私はきっと後悔する。

 だから、踏み出したい。ちゃんと“訊く”選択肢を選びたい。

「にゃ~っ」

 一度降りていたルルが、ぴょんっと私の膝に飛び乗ってくる。

「応援してくれてる?」
「にゃっ」
「ふふ……ありがとう」

 首元ともちもちした背中をそっと撫でて、再びパソコンに向き直る。

 キーボードを打つ手がさっきよりも軽い。汐月くんとも話したいけれど、まずは目の前の原稿と向き合いたい。大椛さんと話した興奮をそのまま形にしたかった。

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