選べなかった恋の続きを、君と紡いで
「……大事な話があって、会いに来たんだ。俺は、七瀬さんのことが好きだよ」
「……!」
まっすぐに目を見つめながら言われた言葉に息を呑んだ。
好き。汐月くんが私のことを?
家の前で待っていてくれた汐月くんを見つけた時以上に、夢かと思った。ドクンドクンと鼓動の音が速く、大きくなる。
嬉しい。夢みたい。私も好き。頭はうまく働いていないのに、次々と喜びをまとった言葉だけが頭に浮かぶ。
「私も……!」
やっとのことで放った言葉は、勢いをつけて夜道に反響した。緊張感を秘めていた汐月くんの目が見開かれ、ふっと和らぐ。
「……夢じゃないよな?」
「……夢じゃないよね?」
同時につぶやいて、顔を見合わせた。一拍置いてからぷっとまたほとんど同じタイミングで吹き出す。ああ、もう。絶対に夢じゃない。ようやく実感が湧いてきた。
「夢じゃない」
「うん、夢じゃないんだ。よかった……」
汐月くんが泣きそうに顔を歪めて、一歩前に出る。伸ばした手をそっと掴まれて、包み込まれた。大きくて少し乾いた手のひら。夜風で冷えた汐月くんの温度が伝わってくる。
その感触が、現実だと教えてくれる気がした。
微笑み合っていると、突然ワン! と鳴き声が響く。びくっとして声のほうを見ると、一匹のトイプードルが私たちに向かって吠えていた。年配の飼い主さんが微笑ましそうに「あらあら」と頬に手を当てていて、思わず汐月くんと顔を見合わせた。首のあたりまで熱い。
「あ、あの。上がっていく……?」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
くすぐったい空気を漂わせながら「どうぞ」とマンションのエントランスに案内しようとすると、手を差し出された。
「よかったら」
「ありがとう……」
スーツケースを代わりに引いてくれる汐月くんの優しさに頬が緩みそうになり、慌てて表情筋を引き締める。