選べなかった恋の続きを、君と紡いで

「やっぱりホワイトデーは期待しててね?」
「楽しみにしてる」

 きっと何か言ったところで、律は律の意思で気持ちを伝えてくれる気がする。だったらやっぱりそれ以上の――上回るほどの愛を伝えるしかない。張り合いたいわけじゃなくて、私も好きだよ。同じくらい想っているよと伝えたいから。

 手を繋いだまま、それぞれシートに背中を預ける。フロントガラスの向こうに広がっていた空の比率は、いつの間にか澄んだ濃紺が大きくなっていた。燃えるような夕陽は、山の向こうに完全に隠れてしまっている。

 夜がもうすぐそこまで来ている。

 シフトレバーの上で甘く指先が絡んだ。

 図書室のカウンターから新幹線のシート。それから、車の座席。自分の足でいろんなところに行き、二人きりの空間を描いている。

 大人になった。関係の名前も呼び方も変わった。けれど、胸を占めるこの愛おしさと幸福だけは変わらないと言える。

 ちらりと律を見れば、薄闇の中で視線が絡まった。

 まだ遅い時間ではないけれど、日が落ちるのが早いからか夜が長く感じてしまう。この後はもう帰路に就くのだろうか。まだ一緒にいたいな……。二人きりのこの甘くて心地よい時間にもう少しだけ浸っていたい。

 律と付き合って一か月。こうしてデートを重ねたり、食事に行ったり……確実に距離は縮まったと思うし深い愛情も感じている。けれど、キス以上の時間はまだ持てていない。そこまで考えたところで急に恥ずかしくなってきた。一人で先走りすぎかもしれない。

「……この後のことなんだけど」

 まさに今考えていたことを律のほうから話題にされて、ぎくりとした。

「まだ時間平気?」
「あ、うん」
「じゃあ、どこかで何か食べて帰ろう。食べたいものある?」

 食べるものを考えようとしたところで、やっぱり……と思い直す。一人で突き進んでいるかもしれない。でも、伝えなければ伝わらない。緊張のせいか、口の中が乾く。

「あの……」

 なんとか唾を飲み込むと、ごくりと喉が鳴った。

「二人きりでいられたら嬉しいんだけど、どう……かな」
「……」

 い、言ってしまった。どんな反応が返ってくるのか見るのが怖くて、一瞬視線を揺らしてしまう。そろそろと目を見ると、眉間にぐっと皺が寄せられていた。真剣で、どこか熱っぽい。耐えるような眼差しに息を呑む。

「……それって、どういう意味で言ってる?」
「……もっと一緒にいたい。近づきたい、って意味」
 
 繋いだ指先に力が入ってしまう。心臓の音がうるさくて、律に聞こえてしまうんじゃないかと思った。まるで磁石で吸い寄せられているみたいに目が背けられない。

「俺も、もっと一緒にいたい」

 いつもよりも低い声が響いた。漆黒のまつ毛に縁どられた瞳が、私だけを見つめている。ごくり……とまた喉が鳴る。

 指先が繋ぎ直されて、応えるように顔を寄せた。

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