選べなかった恋の続きを、君と紡いで
後頭部に手が回されて何度も何度も口づけられた。
どちらのものかわからない密やかな息。ぼんやりとしていく頭の芯。すぐ傍に迫る眼光に、普段と違う熱がにじんでいて胸の奥が強く疼く。
私を求めてくれている。先を望んでくれているという気持ちが届いて、肌が燃えるように熱くなっていく。
「……これ以上したら止まれない」
いつもの温顔も、冷静な声色も、すっかり崩れている。中学生の時には見たことがなかったどこか耐えるような、熱を帯びた目線。
こんなにも情熱的な眼差しを注いできているのに、最後に逃げ道を残し、私の気持ちを確かめようとしてくれている優しさが律らしい。
「私も止まりたくない」
たぶん、私も同じような顔をしている気がした。律の心にもっと触れたくて、隙間なんてないほど抱き合いたい。まだ知らない顔を知りたい。そんな一心で今、自ら望んでここにいる。逞しい背に手を回している。
「……もっと触れたい。もっともっと、俺の気持ちを伝えたい」
低くかすれたような声が甘すぎて、心臓が潰れてしまうかと思った。
頷くと、後頭部を支えられたままゆっくりとソファに押し倒されて、巻いていた髪がさらりと一束落ちた。律がそれを掬い上げてキスを落とす。
好きすぎるせいだろうか。いい大人なのに、緊張しすぎてどうにかなりそうだった。
「どうしよう。ドキドキしすぎてる……」
「俺も」
「ウソ。余裕そうに見えるよ……?」
「好きな子の前だから必死にかっこつけてる」
苦笑した律が、私の手を掴んでそっと自分の胸元へと誘導した。服越しにトクトクと速い胸の音が伝わってくる。
「ホントだ。速い……」
「だろ?」
恥ずかしそうに眉を下げた律が、首筋に唇を埋めてくる。背中に腕を回すと、いつも私を癒してくれる大好きな香りが濃く、甘く漂った。
中学時代の別れ。新幹線での再会。もう一度一緒に重ねた思い出。想いを伝え合った日。たくさんの宝物のような日々が、一気に流れ込んできた。
「ねえ、律」
「ん?」
「……あの日、席間違えてよかった」
顔を上げた律が、くしゃりと初めて見るような笑顔を浮かべた。
「俺もだよ」
視界が潤むのを感じながら、キスを交わし合う。誓いを立てるように指先が絡んだ。
空の色が変化して夜が来ても、次は必ず朝が待っている。変わることは怖いことばかりじゃない。たどり着く先が正解かどうかはわからないけれど、大丈夫だと思えるのは、律がいてくれるから。
「ずっと傍にいるから、傍にいて」
耳元に切実さを秘めた、けれど穏やかな声が落ちる。
今の私たちは、自分たちの足でどこまでもいける。二人一緒に歩いて行ける……それだけで充分だった。