選べなかった恋の続きを、君と紡いで
「おはよう、律」
ふっと意識が浮上して目を開けると、中学生の頃とは違う一花が俺の顔を覗き込んでいた。あの頃より伸びて茶色く染められた髪がさらりとカーテンのように揺れる。
どうやら、懐かしい夢を見ていたらしい。
「おはよう……」
そう答えながら、思わず手を伸ばしていた。一花の白い頬を包むように下から触れると、くすぐったそうに目を細める。胸の奥から愛おしさがとめどなく溢れ出した。
いる。ちゃんとここに。
手の届く範囲に一花がいる。
もう二度と会えないと覚悟していた。あの日臆病な俺が手を伸ばせなかった大切な人。心の片隅でずっと自分の選択に後悔していた。
まだ夢の続きを見ているかのような気持ちだった。
たぶん無意識に、彼女を感じられる仕事を選んでいたのかもしれない。なんていうことを口にしたら重いだろうか。執念深い……かもしれない。けれど一花ならきっと否定だけはしないだろうということがわかる。
今さらやりたいことなんて見つからないかもしれない。選択肢なんてないだろう。そんなふうに生きていた情けない俺に、一花は再会してからもたくさんの可能性をくれた。写真、サボテン……それからクラゲの話。自然と諦めそうになった俺の手を、何度も引っ張ってくれた。綺麗な世界を見せてくれた。
「かわいい」
つい口走った俺に、一花がきょとんとする。それから、頬を真っ赤にして目を逸らされてしまった。
「な、何。いきなりどうしたの。寝惚けてる?」
「寝惚けてない」
「え、えええ~……」
髪を耳にかけながら、一花が視線を揺らす。
昔から変わらない前向きで頑張り屋で、自分の好きなものに対して一直線な人。けれど新しく知った一面もある。誰に対しても平等に穏やかな空気を持って接する人なのになぜか向けられる好意には疎く、控えめ。それから好きなものにまっすぐ突き進んでいるからこそ、迷い、立ち止まることもある人。
頬をたどったまま、ゆっくりと上半身を起こす。
だからこそ、悩むことがあるのなら。立ち止まりかけることがあるのなら、俺が傍で一緒に歩きたい。あの日くれたお守りのような〝大丈夫〟を俺が捧げたい。
見つめれば、ますます一花の顔が赤くなった。付き合ってからもう半年が経ち、昨夜も散々愛を伝えたというのに、初々しい反応をするところもたまらなく愛おしい。思わず頬に軽く口づけてしまった。