選べなかった恋の続きを、君と紡いで
 汐月くんとの食事から一週間が経った。

「へえ~! あの汐月くんと!」

 大学時代の友人である多々良莉乃(たたらりの)が、アイスコーヒーのグラスを持ったまま興味深そうに目を見開いた。莉乃がグラスを置くと、後ろでひとつにまとめた赤に近い茶髪が揺れる。

 今日は大椛さんと明星出版近くのカフェで打ち合わせをした後、莉乃と合流し、お気に入りのイタリアンカフェへとやって来たのだ。

 莉乃はこの近くの会社で働いていて、時々こうして一緒にランチをする友人だ。馬が合い今も定期的に連絡を取り合う仲なのだけれど、お互いなかなか休みがとりづらい、予定が変わりやすい仕事ということもあって、ある時から昼休みを利用し、こうして近況報告をすることが増えたのだ。

 そして以前学生時代の話になった時に、一緒に図書委員をしていた友人……という流れから軽く汐月くんの話をしたことを覚えてくれていたらしい。

「新幹線での再会って漫画みたい。しかもその後また仕事で会うなんてさ、運命的じゃない?」
「私もびっくりした」
「あれ。昔、汐月くんのことが好きだったわけじゃないんだっけ」
「え? うん、当時は友だちだったよ」

 へえ~……と莉乃が意味深にニヤリとした。

「てっきり好きな人なのかと思ってた。図書委員だった時の話をしてる一花、楽しそうだったから」
「それは……」

 たらこのクリームパスタを口に運びながら考えてみる。たしかに楽しかったし特別な時間だったことは間違いない。

「好き、だったのかな。あの頃」
「ええ」

 曖昧な気持ちをそのまま言葉にすると、莉乃がまばたきをする。それからまるで私の代わりに当時のことを振り返るみたいに、う~んと腕を組んで目を閉じた。

「まあ、子どもの頃の恋愛ってそんなものかも。恋の定義? 正解がいまいちわかってなかったというかさ。憧れを好きだと思い込んでたり、周囲にあわせて恋してみようと背伸びしてたり、恋なのか友情なのかわかんなかったり」
「そうなんだよね」

 回顧してみても、当時の気持ちがうまく掴めない。ただ再会できて心が躍ったことは事実だし、突然の引っ越しに強いショックを受けたことも忘れることができない記憶だ。でも、それは他の仲良しの友人――例えば莉乃が相手でも同じだった気がする。
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