ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
そうこうしているうちに、彼は預けていた壁から背中を離していた。静かに足音を立てて、こちらに近付いてくる。
逃げなければとようやく動けるようになった体で踵を返そうとしたけれど、伸びてきた手に腕を掴まれて阻まれてしまった。
「なんで、ここに……」
「僕は魔術師だよ。術と名の付くものは、すべて僕の研究対象だ。――それが例え、世界を越える転移術であっても」
さらりと言われた言葉に彩瑛は呆然とする。
確かに優秀な魔術師であるギルベルトなら、世界を越える術を作り上げることもできるだろう。
――だが、この人はどうして彩瑛が異なる世界から来た人間だと知っていたのか。言っていないはずなのに。
働かせてもらっていた食堂の女将は事情を知っているが、あの人は口が固かった。例えギルベルトにだって、話すことはないはずだ。
「サエの質問には答えたから、次は僕の番だよ。――どうして約束破って、勝手に帰ってきたの」
真っ直ぐに向けられた言葉に、彩瑛はびくりと肩を震わせる。
声が出なくなって、思わず視線を逸らす。
ギルベルトは視線を逸らした彩瑛を見下ろしていたが、階下から届いた賑やかな声に表情を歪めると、彼女の持っていた紙袋を取り、代わりにその手をぎゅっと握った。逃げられないように、しっかりと繋いで。
「外でする話じゃない。……彩瑛の部屋、入れてくれる?」
「っへ、部屋、汚いですし」
「いい、気にしない」
彩瑛が視線だけを上げると、一瞬だけ視線が合う。それからすぐにギルベルトは視線を逸らすように前を向いてしまった。
どうしてこの世界に来たのか。彩瑛に何の用なのか。聞きたいことは次から次に溢れてくるけれど、部屋の前まで連れてこられて扉を開けるように促されれば、彩瑛は言われるがままになるしかなかった。
逃げなければとようやく動けるようになった体で踵を返そうとしたけれど、伸びてきた手に腕を掴まれて阻まれてしまった。
「なんで、ここに……」
「僕は魔術師だよ。術と名の付くものは、すべて僕の研究対象だ。――それが例え、世界を越える転移術であっても」
さらりと言われた言葉に彩瑛は呆然とする。
確かに優秀な魔術師であるギルベルトなら、世界を越える術を作り上げることもできるだろう。
――だが、この人はどうして彩瑛が異なる世界から来た人間だと知っていたのか。言っていないはずなのに。
働かせてもらっていた食堂の女将は事情を知っているが、あの人は口が固かった。例えギルベルトにだって、話すことはないはずだ。
「サエの質問には答えたから、次は僕の番だよ。――どうして約束破って、勝手に帰ってきたの」
真っ直ぐに向けられた言葉に、彩瑛はびくりと肩を震わせる。
声が出なくなって、思わず視線を逸らす。
ギルベルトは視線を逸らした彩瑛を見下ろしていたが、階下から届いた賑やかな声に表情を歪めると、彼女の持っていた紙袋を取り、代わりにその手をぎゅっと握った。逃げられないように、しっかりと繋いで。
「外でする話じゃない。……彩瑛の部屋、入れてくれる?」
「っへ、部屋、汚いですし」
「いい、気にしない」
彩瑛が視線だけを上げると、一瞬だけ視線が合う。それからすぐにギルベルトは視線を逸らすように前を向いてしまった。
どうしてこの世界に来たのか。彩瑛に何の用なのか。聞きたいことは次から次に溢れてくるけれど、部屋の前まで連れてこられて扉を開けるように促されれば、彩瑛は言われるがままになるしかなかった。