ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
後編
 ちゃぷん、と水滴が跳ね、浴室内には温かい空気が漂っている。
 ここのところ残業が続いていて、シャワーで済ませることが多く、ゆっくり浸かることのなかった浴槽にお湯が張ってあることも、浴室が温かくなった理由のひとつだろうが。
 数時間前の彩瑛であれば、ゆっくりお湯に浸かり、夕飯を食べながらレンタルしてきた映画を見て――と週末を楽しむことを考えていただろう。
 だが、ひとりで利用することを想定して作られた手狭な浴槽に浸かっているのは、部屋の主である彩瑛だけではなかった。

「ギル、やっぱり狭いし、早く出よう……?」

 すでに何度も問いかけては何度も同じ答えを返された質問を、彩瑛は背後から抱き締めている彼に尋ねてみる。
 だが、しっかりと彩瑛を抱きかかえ、肩口に顎を乗せている彼――ギルベルトは、悩むことなく即答した。

「嫌だ」

 腹部に巻き付けられた腕に拘束され、彩瑛は動けない。逃がさないと言わんばかりだが、締め付けられるような苦しさはない。
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