ほどけるくらい、愛して〜魔術師は異世界から来た運命のひとを逃がさない〜
 ――ギルベルトは行為のあと、ベッドに沈み込んだ彩瑛に浴室がどこかと尋ねてきた。ぼんやりとした思考のまま彩瑛が浴室の方向を指さすと、彼はそちらへと行ってしまった。
 そのあと矢継ぎ早に浴室の使い方について問いかけられたので答えていると、しばらくして戻ってきたギルベルトに彩瑛は抱きかかえられた。しかも横抱きで。
 戸惑っている彼女とは反対に、ギルベルトは戸惑うことなく浴室へ彩瑛を連れていく。
 冷静になってきた彩瑛の頭に、もしかして、という予感が過ぎったが、その予感を裏切ることなくギルベルトはシャワーのレバーを捻った。シャワーヘッドからぬるいお湯が降ってきて、ふたりを濡らす。
 汗をかいているからと伝えたときに、「あとで一緒に」と言われたけれど、さすがに明るい中で体を見られるのは彩瑛にも抵抗がある。
 首を横に振り、逃げようとしたけれど、ギルベルトが逃がしてくれるはずもなく。
 あれよあれよと体中を洗われ、気付いたら一緒に浴槽に浸かっていた。
 手狭な浴槽は、細身とは言え百八十センチを越えるギルベルトの体には辛いだろうに、彼は彩瑛を背中から抱きながらどこか機嫌が良さそうだ。
隙間などないぐらいに抱き締めてくる腕の温もりや、くっつけられた体に先ほどまでの行為を思い出してしまい、彩瑛は思わず顔を赤らめた。

「サエ、どうしたの」

 居たたまれなくて縮こまっていたら、ギルベルトが横から顔を覗き込んでくる。
 普段は下ろされている前髪が濡れて後ろに撫で付けられている所為で、左右で光彩の違う彼の瞳がよく見えた。
 しかしまさか正直に、何を思っていたのかなんて言えるはずがない。
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