トワイライト〜ふたりで奏でる最高の歌〜
中学生になってからも、見た目を褒められることは変わらなかった。
けど、それに加えて小学生の頃とは違う空気に疲れていた。
一度も話したことない先輩が教室にやってきては、連絡先を聞いてきたり、初対面の男の子に付き合ってほしいと言われたり。
悪気がないことはわかってる。
でも、そんなことが起こるたびに、トラウマに針で触れられるような気持ちになった。
こんなこと、誰にも相談できない。
したところで、贅沢な悩みだとか、自慢だとか思われてしまう。
本当の私の気持ちなんて、誰も興味もない。
あの日、本当はクラスの子たちと放課後遊びに出かける予定だった。
けど、その日はなんだか笑うのに疲れてしまって、限界が来ていた。どこか静かな場所に行きたかった。
『ごめんっ、忘れ物した!みんな先に行ってて!』
とっさにそう言って、教室に戻るふりをした。
そして、数分が経ったあと、
『西山先生に見つかって、手伝いすることになっちゃった…!今回はみんなで遊んできて!』
と嘘のメッセージを送信して、ひとりで校舎を散歩した。
いつもはみんなと歩幅を合わせて歩いていた廊下を、自分のペースで歩くと、本当の自分に戻れた気がした。
廊下を歩いていたら、ふと、使われていない旧校舎が目に入り、私の冒険心をくすぐった。
何かに引き寄せられるかのように、旧校舎の中に入り、歩いている時だった。
微かにギターの音が聞こえ、その音を追いかけていた。
そして、元放送室の前で足を止める。
『♪ 隠れられる夜があるから――』
扉の向こうから聞こえてきた歌声に、息が止まった。
何かから隠れているみたいな、細くて繊細な声。
それでも、感情を乗せた奏でるその後に、気づいたら時には、涙が頬を伝っていた。
私の苦しさ全部を、わかって、寄り添って、包み込んでくれるような歌声。
気がつけば、私は扉に手をかけて部屋の中に入っていた。
そこで初めて目にした、よるの歌う姿。
窓から差し込むオレンジ色の夕日。
その真ん中で、ギターを抱えて歌う小さな背中。
その光景から目が離せなかった。
教室ではほとんど喋らなくて、いつも本を読んでいる立花夜海。
正直、その時までちゃんと話したこともなかった。
なのに。
歌っているよるは、まるで別人だった。
怖がりながらも、一生懸命、自分の心を音にしているみたいで。
心のうちにあるもがきを描いた歌詞と、メロディ。
私と同じだ、と思った。
誰にもいえない悩みをひとりで抱えていて。
胸の奥にずっと閉じ込めていた気持ちが、一気に溢れた。
苦しい、悔しい涙じゃないのは生まれて初めてだった。
彼女が歌い終えた時、私は涙を流したまま、自然と手を叩いていた。
────この子の歌を、もっと聴きたい。
そんな気持ちでいっぱいだった。