乳吸鬼♀&未来偵察メイド:悪魔と共に在る世界 ※(関連作の目次リンクあり)
(4)
この今の時間、この小さな屋敷にはクラフトマンとレトラの二人しかいない。
掃除をしながら、レトラは妙に緊張して警戒してしまう。何をしたらいいかもわからないのだし、何が起きるかもわからない。屋敷は田舎の地主百姓の家に毛が生えた程度の代物で、敷地面積や間取りからしたら小さいくらいだった。だから掃除などしてもすぐに終わってしまう。
昼食のサンドイッチを作って、コーヒーを入れて書斎に運んでいくとき、わずかな不安。食堂ではなく、書斎に持ってきてくれと言われていたのだが、それが何を意味するのか。
「お昼です」
「うん」
ドアをノックして開けると、書きもの机からクラフトマンが振り返った。
「そこに置いてくれ」
促されるままに、サンドイッチのお盆をソファセットのテーブル置く。
「そっちに座ってくれ」
まるで簡易ベッドのようなソファだった。
レトラはギクリとしたが逆らうわけにもいかず従う。クラフトマンが椅子から立ち上がって近寄ってくる。つい膝が震えてしまう。
クラフトマンはそのまま向かい側のソファに腰掛けて、テーブルのお盆を脇にどけ、机上に二枚のコインを置いた。
「これを見て欲しい」
それは昨晩にレトラを救った白金貨だった。
同じものが二枚ある。
「私はあのとき、半分だけ嘘を吐いた。プラチナ貨としての価値や金額はごまかしていないが、その同じ年号の全く同じコインを既に持っていた」
「間違えたんですか?」
今度は、難しい顔のクラフトマンがまさか「あの取引はなしだ」と言い出さないかと不安が募る。
「そうじゃない! わざとだよ! その年号だったから、わざと自分で手に入れて確かめたり調べたかったんだ」
「?」
「その年号で、そんなに状態が良いということはどこかで大事に保管されていたということだ。そしてその年号は特別なものなのさ」
「特別?」
「同じ型のコインは古銭市場にも出回っていて、買おうと思えば手に入れられる。だが「歴史上には存在しなかった年」で、出所は限られている。特殊な用途で作られたコインなんだよ。それは特別な歳出と用途のために発行された」
そこで、クラフトマンは背もたれに背中を投げて「ふう」とため息を吐いた。
「「命と全てを買い取る」という意味なのさ。それを与えられることは、「全てを奪われる」ことを意味していた。貴金属や貨幣としての客観的な価値や値打ちでなく、象徴的な対価でしかない」
なんだか恐ろしい話になってきた。
「で、でも! だったらわたしは」
「いや、それが君についてなのかどうかはわからないし、君はまだ生きているのだから、その解釈は不自然ってものだろう」
うろたえるレトラに、クラフトマンは打ち消すように片手をヒラヒラさせた。
「だ、だったら?」
「別に君が狙われたとは限らないし、ひょっとすると単に助けようとして、手持ちのそのコインを与えただけかもしれない。あるいは」
「あるいは?」
促すレトラにクラフトマンは答えた。
「この町全部への死刑宣告」
間があった。あまりに突拍子もない。
目を白黒させるレトラに、やがてクラフトマンは本題の質問を投げかけた。
「君にこのコインを与えて、魔術道具の針を刺した男というのは? どんなふうだったか教えてくれないものだろうか? 何か知っている相手だったり関わったことはないだろうか?」
「よくわからないんです。知り合いっていうより、たまたま出くわしただけで。私は檻の中でしたけど。私の方こそ「何だったの?」って聞きたいくらいで」
クラフトマンはふっと笑うように言った。
「悪魔や死神だったのかもしれないな」
この今の時間、この小さな屋敷にはクラフトマンとレトラの二人しかいない。
掃除をしながら、レトラは妙に緊張して警戒してしまう。何をしたらいいかもわからないのだし、何が起きるかもわからない。屋敷は田舎の地主百姓の家に毛が生えた程度の代物で、敷地面積や間取りからしたら小さいくらいだった。だから掃除などしてもすぐに終わってしまう。
昼食のサンドイッチを作って、コーヒーを入れて書斎に運んでいくとき、わずかな不安。食堂ではなく、書斎に持ってきてくれと言われていたのだが、それが何を意味するのか。
「お昼です」
「うん」
ドアをノックして開けると、書きもの机からクラフトマンが振り返った。
「そこに置いてくれ」
促されるままに、サンドイッチのお盆をソファセットのテーブル置く。
「そっちに座ってくれ」
まるで簡易ベッドのようなソファだった。
レトラはギクリとしたが逆らうわけにもいかず従う。クラフトマンが椅子から立ち上がって近寄ってくる。つい膝が震えてしまう。
クラフトマンはそのまま向かい側のソファに腰掛けて、テーブルのお盆を脇にどけ、机上に二枚のコインを置いた。
「これを見て欲しい」
それは昨晩にレトラを救った白金貨だった。
同じものが二枚ある。
「私はあのとき、半分だけ嘘を吐いた。プラチナ貨としての価値や金額はごまかしていないが、その同じ年号の全く同じコインを既に持っていた」
「間違えたんですか?」
今度は、難しい顔のクラフトマンがまさか「あの取引はなしだ」と言い出さないかと不安が募る。
「そうじゃない! わざとだよ! その年号だったから、わざと自分で手に入れて確かめたり調べたかったんだ」
「?」
「その年号で、そんなに状態が良いということはどこかで大事に保管されていたということだ。そしてその年号は特別なものなのさ」
「特別?」
「同じ型のコインは古銭市場にも出回っていて、買おうと思えば手に入れられる。だが「歴史上には存在しなかった年」で、出所は限られている。特殊な用途で作られたコインなんだよ。それは特別な歳出と用途のために発行された」
そこで、クラフトマンは背もたれに背中を投げて「ふう」とため息を吐いた。
「「命と全てを買い取る」という意味なのさ。それを与えられることは、「全てを奪われる」ことを意味していた。貴金属や貨幣としての客観的な価値や値打ちでなく、象徴的な対価でしかない」
なんだか恐ろしい話になってきた。
「で、でも! だったらわたしは」
「いや、それが君についてなのかどうかはわからないし、君はまだ生きているのだから、その解釈は不自然ってものだろう」
うろたえるレトラに、クラフトマンは打ち消すように片手をヒラヒラさせた。
「だ、だったら?」
「別に君が狙われたとは限らないし、ひょっとすると単に助けようとして、手持ちのそのコインを与えただけかもしれない。あるいは」
「あるいは?」
促すレトラにクラフトマンは答えた。
「この町全部への死刑宣告」
間があった。あまりに突拍子もない。
目を白黒させるレトラに、やがてクラフトマンは本題の質問を投げかけた。
「君にこのコインを与えて、魔術道具の針を刺した男というのは? どんなふうだったか教えてくれないものだろうか? 何か知っている相手だったり関わったことはないだろうか?」
「よくわからないんです。知り合いっていうより、たまたま出くわしただけで。私は檻の中でしたけど。私の方こそ「何だったの?」って聞きたいくらいで」
クラフトマンはふっと笑うように言った。
「悪魔や死神だったのかもしれないな」