乳吸鬼♀&未来偵察メイド:悪魔と共に在る世界 ※(関連作の目次リンクあり)
(どうしたらいいんだろう? 何もしない方がいいのかな?)
額を膝につけて丸まって、できるだけ外の世界を意識から締めだそうとする。休息であって逃避かもしれないが、ひょっとしたら人生で最後の安らかな時間なのかもしれない。そうしてわずかにまどろみながら、頭の中で悩みと考え事だけがどうどう巡りし続ける。
今朝方に、斜め向かいの同じような「売却待ちでさらし者」にされていた女の、愚かで哀れな顛末のことも、頭から離れない。
あれは愚かで無恥無慙な行動ではあったけれども、あの女なりに必死で勇気を振り絞った行動だったのだろうし、結末がどうであれ笑うべきではないのだろう。だいたい、「売却待ちの奴隷家畜」として檻に入れられて路傍で値踏みのさらし者にされたら、それだけで正常な精神状態を保てなくなったり、パニックになったり、思考や行動が変になってしまって当たり前なんだろう。レトラだって、こうしてできるだけ朦朧としていないと、泣き出すどころか叫び出しそうになってくる。
(あの人、確率からしたら五分五分だったわよね?)
決死の行動も、運の良し悪しの影響はある。
どうやら彼女は身体的な魅力にいささか自身を持っていたようで、服を脱ぎ捨ててセルフアピールしだしたのだった。たしかに妾や愛人奴隷であれば、そうやたらめったらには殺されにくいだろうし、子供でも出来れば扱いが良くなったり生存が保護される可能性も高い。
だが、たまたま通りがかったのが「魔族の美食家」だった。「なかなかいい肉付きしているな、この豚は幾らだ? 今日の晩にちょっとした晩餐会をやるんだがちょうどいい」、それで万事が終わりであった。ここの買い手の客が人間だけではないという特殊事情による悲劇なわけだが、もしも偶然に先にやってきたのがエルフ族の男性や人間の金持ちであったらそいつの気分次第で救われていた可能性もあった。致命的に運が悪かった。
「キヒッ、ヒッヒ……」
レトラの唇から、神経質で病んだ笑み声が出てしまう。
あの悲惨事には皮肉過ぎて喜劇性すらあったわけで、ご本人も居合わせた他人も笑うしかないのだが、それでも嘲笑うわけにはいかないだろう。あの女だって、助かろうと命がけで足掻いて墓穴を掘っただけなのだし、そこまで残酷な結末になるほど悪い人間には見えなかった。レトラだって明日の我が身なのであるし、「あれが自分でなくて良かった」とわずかに安堵してもいたし、名前すら知らない同年代くらいの彼女に同情して哀れに思っていることも事実だ。
あのときの、あんな変で奇怪な表情をした女を、人間を見たことがない。「え、嫌だよ! ちょっと待ってよ、なんでそうなるのさ?」。そこからは、文字通りに「屠殺されるメスブタ」そのものの有様で、檻から引きずり出されるのに半狂乱で抵抗して泣き叫び、助けや慈悲を求めて喚きながら周囲を見廻したり。連れ去られたあとには漏らした小便の水たまりにクソの欠片が転がっていた。
今ごろはもう殺されてしまっただろうか。
せめて、その魂が安らかでありますように!
「ふひっ、ひっひっ」
変な笑い声を噛み殺しながら、レトラは目頭が熱くなってくる。やがてしょっぱい雫が頬を伝い落ちて、また少し泣いてしまった。
やがて、寝ているのか起きているのかさえわからなくなった日中に、その「悪魔のような男」がやってきた。そのときは冷淡で意地悪な人くらいにしか思わなかったが、彼の不可思議なプレゼントとその後の行動は、レトラの運命に大きな影響を与えることになったのだった。
額を膝につけて丸まって、できるだけ外の世界を意識から締めだそうとする。休息であって逃避かもしれないが、ひょっとしたら人生で最後の安らかな時間なのかもしれない。そうしてわずかにまどろみながら、頭の中で悩みと考え事だけがどうどう巡りし続ける。
今朝方に、斜め向かいの同じような「売却待ちでさらし者」にされていた女の、愚かで哀れな顛末のことも、頭から離れない。
あれは愚かで無恥無慙な行動ではあったけれども、あの女なりに必死で勇気を振り絞った行動だったのだろうし、結末がどうであれ笑うべきではないのだろう。だいたい、「売却待ちの奴隷家畜」として檻に入れられて路傍で値踏みのさらし者にされたら、それだけで正常な精神状態を保てなくなったり、パニックになったり、思考や行動が変になってしまって当たり前なんだろう。レトラだって、こうしてできるだけ朦朧としていないと、泣き出すどころか叫び出しそうになってくる。
(あの人、確率からしたら五分五分だったわよね?)
決死の行動も、運の良し悪しの影響はある。
どうやら彼女は身体的な魅力にいささか自身を持っていたようで、服を脱ぎ捨ててセルフアピールしだしたのだった。たしかに妾や愛人奴隷であれば、そうやたらめったらには殺されにくいだろうし、子供でも出来れば扱いが良くなったり生存が保護される可能性も高い。
だが、たまたま通りがかったのが「魔族の美食家」だった。「なかなかいい肉付きしているな、この豚は幾らだ? 今日の晩にちょっとした晩餐会をやるんだがちょうどいい」、それで万事が終わりであった。ここの買い手の客が人間だけではないという特殊事情による悲劇なわけだが、もしも偶然に先にやってきたのがエルフ族の男性や人間の金持ちであったらそいつの気分次第で救われていた可能性もあった。致命的に運が悪かった。
「キヒッ、ヒッヒ……」
レトラの唇から、神経質で病んだ笑み声が出てしまう。
あの悲惨事には皮肉過ぎて喜劇性すらあったわけで、ご本人も居合わせた他人も笑うしかないのだが、それでも嘲笑うわけにはいかないだろう。あの女だって、助かろうと命がけで足掻いて墓穴を掘っただけなのだし、そこまで残酷な結末になるほど悪い人間には見えなかった。レトラだって明日の我が身なのであるし、「あれが自分でなくて良かった」とわずかに安堵してもいたし、名前すら知らない同年代くらいの彼女に同情して哀れに思っていることも事実だ。
あのときの、あんな変で奇怪な表情をした女を、人間を見たことがない。「え、嫌だよ! ちょっと待ってよ、なんでそうなるのさ?」。そこからは、文字通りに「屠殺されるメスブタ」そのものの有様で、檻から引きずり出されるのに半狂乱で抵抗して泣き叫び、助けや慈悲を求めて喚きながら周囲を見廻したり。連れ去られたあとには漏らした小便の水たまりにクソの欠片が転がっていた。
今ごろはもう殺されてしまっただろうか。
せめて、その魂が安らかでありますように!
「ふひっ、ひっひっ」
変な笑い声を噛み殺しながら、レトラは目頭が熱くなってくる。やがてしょっぱい雫が頬を伝い落ちて、また少し泣いてしまった。
やがて、寝ているのか起きているのかさえわからなくなった日中に、その「悪魔のような男」がやってきた。そのときは冷淡で意地悪な人くらいにしか思わなかったが、彼の不可思議なプレゼントとその後の行動は、レトラの運命に大きな影響を与えることになったのだった。