乳吸鬼♀&未来偵察メイド:悪魔と共に在る世界 ※(関連作の目次リンクあり)
(4)
それでも、と心のどこかで考えてしまう。
今のレトラは、ほんのわずかでも魔術が使えるのだから、隙を作って逃がしてあげるくらいならばできそうなものだった。傷も、完全でなくても治せるかもしれない。ルントゥやクラフトマンだったらあながち不可能でもないだろう。
だがそれは、支配体制の意思に逆らうこと。
あまりに反抗的だと見られれば、自分自身がターゲットにもされかねない。高度に組織化されたイジメとヒエラルキー支配には逆らえない。
自分だけのその場限りでの行動なら決断できなくもなかっただろうが、それだけで済むとは思われなかった。ルントゥやクラフトマンは知っていてもわざと見逃してくれるかもしれないし、頼めば協力すらしてくれるかもしれない(ルントゥが自分を売って当局に突き出すとは考えにくいが、クラフトマンは庇ってくれたとしても、娘とメイドの二択を迫られればためらわないだろう)。だがそれでお別れになってしまうか、巻き込むことになりかねない。
第一に、今回にあの晒し者にされている犠牲者たちを助け出したり、今さっきの檻の中の人々を逃がしてあげられたとしても、それで終わりにはならない。似たような境遇の不幸な人間が常時に必然的に出るし、それによって維持されている社会の仕組みなのだった。魔族や便乗した悪人エリートたちの悪意で支えられている支配体制や支配階級をぶち壊しでもしない限りはどうにもならないわけで、最後には革命やクーデターでもやるしかなくなってくるだろう。自分にそこまでできるとはとても思えない。
「難しくて、辛そうな顔してる」
「自分が白状さが情けないんです」
「あとは、香辛料のソースだけ買ったら、買い物は終わりだよ。パンは配達を頼んであるから」
ルントゥは決まりが悪いのか、それとも「ありふれた不幸な他人」より自分たちの日常生活の買い物の方が大事なのか、そんなふうに言った。
そしてポツリと付け加えた。
「手を切り落として首輪で立ったままに吊すとか、えげつないことするよね。誰かがコソッと果物やパンを投げても、あれじゃあ拾えないもの」
(5)
瓶入りの香辛料ソースを二瓶買って、二人は悩ましい足取りで家路につく。
「あれってさ」
ルントゥが言い辛そうに、ポツリと切り出す。
「ラルティを釣ろうとしてるんだと思う」
「ラルティさん?」
たしかにラルティだったら、知っていて同情している元依頼人たちが、案件のこじれであんなことになっていたら、助けようとするかもしれない。
「助けるより、いっそ「楽にしてやろう」とか考えるかもね。あいつって短絡的だったりたまに変に潔いところがあるからさ。でも、それをやってラルティも逃げ切れるかどうか」
どうやらルントゥはレトラの考えているであろうことを先読みしたらしい。
だが二人には全く関係のない「別の危険」が迫っていたのだった。なにしろルントゥ自身もまた、悪辣の輩から狙われる立場だったのだから。
それでも、と心のどこかで考えてしまう。
今のレトラは、ほんのわずかでも魔術が使えるのだから、隙を作って逃がしてあげるくらいならばできそうなものだった。傷も、完全でなくても治せるかもしれない。ルントゥやクラフトマンだったらあながち不可能でもないだろう。
だがそれは、支配体制の意思に逆らうこと。
あまりに反抗的だと見られれば、自分自身がターゲットにもされかねない。高度に組織化されたイジメとヒエラルキー支配には逆らえない。
自分だけのその場限りでの行動なら決断できなくもなかっただろうが、それだけで済むとは思われなかった。ルントゥやクラフトマンは知っていてもわざと見逃してくれるかもしれないし、頼めば協力すらしてくれるかもしれない(ルントゥが自分を売って当局に突き出すとは考えにくいが、クラフトマンは庇ってくれたとしても、娘とメイドの二択を迫られればためらわないだろう)。だがそれでお別れになってしまうか、巻き込むことになりかねない。
第一に、今回にあの晒し者にされている犠牲者たちを助け出したり、今さっきの檻の中の人々を逃がしてあげられたとしても、それで終わりにはならない。似たような境遇の不幸な人間が常時に必然的に出るし、それによって維持されている社会の仕組みなのだった。魔族や便乗した悪人エリートたちの悪意で支えられている支配体制や支配階級をぶち壊しでもしない限りはどうにもならないわけで、最後には革命やクーデターでもやるしかなくなってくるだろう。自分にそこまでできるとはとても思えない。
「難しくて、辛そうな顔してる」
「自分が白状さが情けないんです」
「あとは、香辛料のソースだけ買ったら、買い物は終わりだよ。パンは配達を頼んであるから」
ルントゥは決まりが悪いのか、それとも「ありふれた不幸な他人」より自分たちの日常生活の買い物の方が大事なのか、そんなふうに言った。
そしてポツリと付け加えた。
「手を切り落として首輪で立ったままに吊すとか、えげつないことするよね。誰かがコソッと果物やパンを投げても、あれじゃあ拾えないもの」
(5)
瓶入りの香辛料ソースを二瓶買って、二人は悩ましい足取りで家路につく。
「あれってさ」
ルントゥが言い辛そうに、ポツリと切り出す。
「ラルティを釣ろうとしてるんだと思う」
「ラルティさん?」
たしかにラルティだったら、知っていて同情している元依頼人たちが、案件のこじれであんなことになっていたら、助けようとするかもしれない。
「助けるより、いっそ「楽にしてやろう」とか考えるかもね。あいつって短絡的だったりたまに変に潔いところがあるからさ。でも、それをやってラルティも逃げ切れるかどうか」
どうやらルントゥはレトラの考えているであろうことを先読みしたらしい。
だが二人には全く関係のない「別の危険」が迫っていたのだった。なにしろルントゥ自身もまた、悪辣の輩から狙われる立場だったのだから。