乳吸鬼♀&未来偵察メイド:悪魔と共に在る世界 ※(関連作の目次リンクあり)
まだ背後から追いすがってくるのを(たぶん後ろにいた奴らだろう)、切り札の魔法衝撃で吹っ飛ばして面食らわせ(これっきりの虎の子だ!)、死に物狂いで走り続ける。途中でルントゥがスピードを落としてレトラを待って、渾身の稲妻をぶっつけ、道に半分くらい突き出ていたバルコニーを頭上に落とす。緊急避難だから容赦はない。
「急いで! 走って!」
「ウワアアアアア!!」
安全地帯の自分たちの街区にゴールインしたときになって、レトラは服を忘れてきていたことに気がついた。そのくせ買い物カゴだけは握りしめているのだった。
「あら、そんな格好で!」
「うわああ」
レトラは身体を抱きかかえるように隠して赤面しながらうずくまる。ルントゥがマントを脱いで掛けてくれたのでいくらか助かったが。
その日以来に、レトラは助けに出てきた人々や目撃者たちから「全裸疾走のビーナス」のあだ名がついたらしい。
(2)
エルフやドワーフのグループと魔族というのは必ずしも仲がよくない。上位種族グループとして並立しているだけであって(戦闘力こそはあるが少数派グループであるから社会的な地位を守る必要上に協定で連帯しているだけ)、前者は人間に対して立場の優位や自分たちの安全さえ保持できれば十分で、過剰な虐待や迫害もやる理由が薄い。だから自然と暗黙の対立関係がある。
それがこういう機会にはしばしば表面化してきて、いわゆる「縄張り争いの抗争」のような乱闘沙汰も珍しくない。こんな魔族支配の拠点の近くに、彼らがわざわざ居住区を確保しているのも、権力や支配階級にすり寄っているというより「勝手されないように監視して無言のプレッシャーをかけるため」でしかない。中には全く魔族を恐れずにフリーダムな生活したり、チンピラみたいな態度をとる者までいる(能力からして、エルフやドワーフは弱者ではない)。
人間に対する魔族の横暴は、人間を捕食しないと生きられない先天的加害者(半分は建前やイデオロギーだが)の事情からある程度まで黙認されがちだったが、それでも限度や事と場合にもよる。彼らは身内や管理下の人間の下僕や友人が被害を受けた場合、自分たちの集団への攻撃と見做すことが多い。
ルントゥとレトラを追ってきた魔族と手下の人間のならず者にとって誤算だったのは、たまたま「発火の火打ち石」になりうる好戦的な逸材が居合わせてしまったことだ。
「おい、ルントゥ! 悲鳴のテレパシー出してただろう? どうした?」
まるで狼のような獣耳の青年ガリウス。どこかルントゥに似ているのは従兄だからだそうで、彼は母親が狼女なのだとか。あとで聞いたところによれば闘技場の常連選手で、あのラルティとは飲み友達らしい。
「おかしなのに狙われて。女の子狙いで乱暴されそうになって、レトラの機転でやっと逃げて」
「おう、うちの妹が世話になったな!」
いつの間にか、棍棒やシャベルなどの鈍器を手にしたエルフやドワーフたちが凶悪な笑顔で集結中。本格的な武器を使うと「反乱やクーデター」に見られて面倒なので、あくまで「乱闘の喧嘩」である。元来が快く思われておらず、あとは口実と正当化できる理由があればよい。
あのクラフトマンですら、火かき棒を手にして嬉々として現れた。
「急いで! 走って!」
「ウワアアアアア!!」
安全地帯の自分たちの街区にゴールインしたときになって、レトラは服を忘れてきていたことに気がついた。そのくせ買い物カゴだけは握りしめているのだった。
「あら、そんな格好で!」
「うわああ」
レトラは身体を抱きかかえるように隠して赤面しながらうずくまる。ルントゥがマントを脱いで掛けてくれたのでいくらか助かったが。
その日以来に、レトラは助けに出てきた人々や目撃者たちから「全裸疾走のビーナス」のあだ名がついたらしい。
(2)
エルフやドワーフのグループと魔族というのは必ずしも仲がよくない。上位種族グループとして並立しているだけであって(戦闘力こそはあるが少数派グループであるから社会的な地位を守る必要上に協定で連帯しているだけ)、前者は人間に対して立場の優位や自分たちの安全さえ保持できれば十分で、過剰な虐待や迫害もやる理由が薄い。だから自然と暗黙の対立関係がある。
それがこういう機会にはしばしば表面化してきて、いわゆる「縄張り争いの抗争」のような乱闘沙汰も珍しくない。こんな魔族支配の拠点の近くに、彼らがわざわざ居住区を確保しているのも、権力や支配階級にすり寄っているというより「勝手されないように監視して無言のプレッシャーをかけるため」でしかない。中には全く魔族を恐れずにフリーダムな生活したり、チンピラみたいな態度をとる者までいる(能力からして、エルフやドワーフは弱者ではない)。
人間に対する魔族の横暴は、人間を捕食しないと生きられない先天的加害者(半分は建前やイデオロギーだが)の事情からある程度まで黙認されがちだったが、それでも限度や事と場合にもよる。彼らは身内や管理下の人間の下僕や友人が被害を受けた場合、自分たちの集団への攻撃と見做すことが多い。
ルントゥとレトラを追ってきた魔族と手下の人間のならず者にとって誤算だったのは、たまたま「発火の火打ち石」になりうる好戦的な逸材が居合わせてしまったことだ。
「おい、ルントゥ! 悲鳴のテレパシー出してただろう? どうした?」
まるで狼のような獣耳の青年ガリウス。どこかルントゥに似ているのは従兄だからだそうで、彼は母親が狼女なのだとか。あとで聞いたところによれば闘技場の常連選手で、あのラルティとは飲み友達らしい。
「おかしなのに狙われて。女の子狙いで乱暴されそうになって、レトラの機転でやっと逃げて」
「おう、うちの妹が世話になったな!」
いつの間にか、棍棒やシャベルなどの鈍器を手にしたエルフやドワーフたちが凶悪な笑顔で集結中。本格的な武器を使うと「反乱やクーデター」に見られて面倒なので、あくまで「乱闘の喧嘩」である。元来が快く思われておらず、あとは口実と正当化できる理由があればよい。
あのクラフトマンですら、火かき棒を手にして嬉々として現れた。