乳吸鬼♀&未来偵察メイド:悪魔と共に在る世界 ※(関連作の目次リンクあり)
「なんだか変な銀貨だな? 年号が。今どきのじゃあないみたいだぞ?」
「かしてみろ。ふうむ? 今のじゃない、古いのか、よその地域のじゃないか?」
「ちょっと待てよ。これ、銀じゃなくてプラチナ(白金)っぽくないか?」
客たちが、レトラの服から転がり出た一枚の硬貨で議論しだす。
だが、そのコインがプラチナというのは驚きだった。レトラもそういう名前の貴金属があることは知っていたけれども、記憶にあるかぎりでお目にかかったことはついぞないはずだ。だからてっきり銀貨だと思い込んでいたのだった。魔族は銀にアレルギーがあったりするようだから、あの男がいざというときの資金やお守りにくれたのだと思い込んでいた。
無知なりに議論を理解しようとする。
やがて結論が出たようだった。
「これ、古代のプラチナ貨だよ。私が古物学を趣味にしていることはご存じだろう?」
「へええ、本当かよ?」
「本当さ! 私が買い取ろう。さして珍しいというほどではないんだが、せっかくの機会だから。ちょくちょく買ってコレクションしているが、この年数のものはなかったはず」
その言葉で、レトラはつい「ダメです!」と言いそうになったが、言われた意味を悟って喉でとどまる。「貰う」ではなく「買い取る」と。
「ほら、これでどうだろう?」
その魔族らしき年配の男がポケットから数枚の金貨銀貨を取り出す。
どうも身なりの趣味や物心と態度からして、魔族としては温厚で話がわかる部類なのかもしれない。あの、自分をこのオークションに引っ張ってきた女の言ったことの意味がようやくにしてわかってくる。
「これで、お前さんの身代金くらいにゃなる。釣りがくるだろうよ」
こうしてレトラは自由になった。
あんまりにいきなりのことだったので実感がわかない。それは信じがたい幸運だったのだろうけれど、まさかこんな硬貨一枚で自分の人生が左右されつとは夢にも思ってみなかった。
その場であの「仲買ブローカー」の女性に金を渡して、他の一緒に売られていた奴隷女たちがジロジロ見てくるので、なんとなく後ろめたい気がして、小さな少額の銀貨を一枚ずつ餞別に渡してやった(あとで必要な小物やら衣服の替えを買うくらいはできるだろう)。それでもレトラの手元にいくらかは残った。
「これで、本当に自由の身なんですか?」
「そうだよ。あんたはラッキーさ」
あの仲買ブローカーの女がどこかほっとした顔をして、さらさらとサインした小さな書類を渡してくれる。それはレトラという人間一人の領収書と解放の証明。
狐につままれるレトラに、魔族の「古物学者」の年配男が言う。ほとんど老人だったが、まだかくしゃくたるご様子。
「私はクラフトマン博士、古代史と古物研究の学者で通っている。しばらくうちに雇われないか? 義理の娘の相手やら、家事を頼みたいんだ」
それは奴隷として買われるのでなく、メイドの使用人としての雇用契約の持ちかけだった。
「かしてみろ。ふうむ? 今のじゃない、古いのか、よその地域のじゃないか?」
「ちょっと待てよ。これ、銀じゃなくてプラチナ(白金)っぽくないか?」
客たちが、レトラの服から転がり出た一枚の硬貨で議論しだす。
だが、そのコインがプラチナというのは驚きだった。レトラもそういう名前の貴金属があることは知っていたけれども、記憶にあるかぎりでお目にかかったことはついぞないはずだ。だからてっきり銀貨だと思い込んでいたのだった。魔族は銀にアレルギーがあったりするようだから、あの男がいざというときの資金やお守りにくれたのだと思い込んでいた。
無知なりに議論を理解しようとする。
やがて結論が出たようだった。
「これ、古代のプラチナ貨だよ。私が古物学を趣味にしていることはご存じだろう?」
「へええ、本当かよ?」
「本当さ! 私が買い取ろう。さして珍しいというほどではないんだが、せっかくの機会だから。ちょくちょく買ってコレクションしているが、この年数のものはなかったはず」
その言葉で、レトラはつい「ダメです!」と言いそうになったが、言われた意味を悟って喉でとどまる。「貰う」ではなく「買い取る」と。
「ほら、これでどうだろう?」
その魔族らしき年配の男がポケットから数枚の金貨銀貨を取り出す。
どうも身なりの趣味や物心と態度からして、魔族としては温厚で話がわかる部類なのかもしれない。あの、自分をこのオークションに引っ張ってきた女の言ったことの意味がようやくにしてわかってくる。
「これで、お前さんの身代金くらいにゃなる。釣りがくるだろうよ」
こうしてレトラは自由になった。
あんまりにいきなりのことだったので実感がわかない。それは信じがたい幸運だったのだろうけれど、まさかこんな硬貨一枚で自分の人生が左右されつとは夢にも思ってみなかった。
その場であの「仲買ブローカー」の女性に金を渡して、他の一緒に売られていた奴隷女たちがジロジロ見てくるので、なんとなく後ろめたい気がして、小さな少額の銀貨を一枚ずつ餞別に渡してやった(あとで必要な小物やら衣服の替えを買うくらいはできるだろう)。それでもレトラの手元にいくらかは残った。
「これで、本当に自由の身なんですか?」
「そうだよ。あんたはラッキーさ」
あの仲買ブローカーの女がどこかほっとした顔をして、さらさらとサインした小さな書類を渡してくれる。それはレトラという人間一人の領収書と解放の証明。
狐につままれるレトラに、魔族の「古物学者」の年配男が言う。ほとんど老人だったが、まだかくしゃくたるご様子。
「私はクラフトマン博士、古代史と古物研究の学者で通っている。しばらくうちに雇われないか? 義理の娘の相手やら、家事を頼みたいんだ」
それは奴隷として買われるのでなく、メイドの使用人としての雇用契約の持ちかけだった。